裁判記録の廃棄検証報告書に遺族「納得できない」 改善策の実効性は

 重大な少年事件などの記録廃棄を検証した最高裁の調査報告書からは、保存への意識が乏しい裁判所内で、責任があいまいなまま記録が捨てられていた実態が浮かんだ。今後は、非を認めた最高裁が打ち出した改善策の実効性が問われる。

 「後世に引き継ぐべき記録を多数失わせてしまったことについて深く反省し、国民の皆様におわび申し上げます」

 25日に会見した最高裁の小野寺真也総務局長は、こう述べて10秒あまり頭を下げた。

大幅に広がる対象事件 保管場所不足に直面

 最高裁は報告書で、裁判記録には「国民共有の財産」として歴史的、社会的な意義がある資料があることを明記。問題の原因は「最高裁の不適切な対応」にあったと全面的に責任を認めた。

 裁判記録の廃棄は過去にも問題になっていた。

 朝日新聞は2019年、憲法25条が定める生存権の解釈が争われた「朝日訴訟」など、重要な憲法判断が示された多くの民事裁判の記録が、特別保存されないまま東京地裁で廃棄されていたと報じた。

 これを受けて東京地裁は20年、再発防止策として、「主要な日刊紙2紙以上に判決記事が載った事件」(2紙基準)などの場合に特別保存するという具体的な運用要領を策定した。最高裁は各地の裁判所に、この規定を参考に要領を設けるよう呼びかけた。

 神戸連続児童殺傷事件など、今回発覚した記録廃棄の時期は、大半が要領の策定前だった。ただ、要領策定時には残っていたのに、基準に該当するかをさかのぼって検討しなかった結果、廃棄された記録があったことも判明。小野寺氏は「当時の取り組みは十分ではなかった」と述べた。

 こうした反省を踏まえ、報告書では、第三者委員会の設置や運用面の手順の見直しなどの改善策を盛り込んだ。だが具体的な改定作業はこれからで、実効性が確保されるかは見通せていない。

 2紙基準については、これまで除外してきた地域面の記事も含めるとしており、対象事件は大幅に広がる。一方で保管場所の不足は既に大きな課題になっている。小野寺氏は「必要な支援をする」としたが、現役のベテラン書記官は「ただでさえ保管場所に苦労しているのに、特別保存が増えたらどこに保管するのか」と不安を漏らした。遠藤隆史

被害者遺族「苦しい心情に配慮しているか、精査」

 問題発覚のきっかけとなった神戸連続児童殺傷事件。最高裁の調査報告書によると、神戸家裁の担当職員は当時の所長を含む複数の管理職に話を持ちかけたが、所長に、自身が事件記録を特別保存とすべきか判断する立場との認識がなかったという。裁判官からは「前代未聞の事件。保存すべきだ」などの声もあったが、所長には伝わらなかったという。最終的に担当職員が「これまで神戸家裁で特別保存にした事件はない、と聞いていた」「少年事件は非公開」などの理由で、所長に判断を仰がずに廃棄したという。

 神戸家裁は25日、「当時の運用が不適切で、厳粛に受け止めている。改正される規定に従い、適切な運用を確保していきたい」とコメントした。

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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