腹筋の割れた男。スーツ姿で腕組みする「デキる男」。街中を意識して歩けば「男らしさ」を強調した広告に囲まれていることがわかる。「ジェンダー目線の広告観察」を今秋出版した小林美香さんは、広告表現からも「男らしさの呪縛」が見て取れると語る。
――9月に出版した本で、「女らしさ」「男らしさ」が見えるジェンダー表現の例として「脱毛広告」に目を向けています
美術系の大学で講座を持ち、ジェンダーやアート、写真について講演し、執筆活動をしています。都内に住んでいて、電車で移動していると、ここ数年、特に美容脱毛の広告の圧倒的な量と種類の多さが気になり、写真を撮って観察を続けていました。脱毛広告からジェンダー規範として描かれる表象(イメージ)の変化に目が行きました。
――どんな広告ですか?
女性向けだと、「どんな美人も、3日で生える」といったキャッチコピーで容姿に対するコンプレックスをあおる広告があります。
一方、プラスサイズモデル(平均より大きな身体のモデル)のように体形を個性ととらえる「ボディーポジティブ」の流れのなか、タレント渡辺直美さんを起用した広告もありました。
近年は、国連のSDGs(持続可能な開発目標)の採択や性的少数者をとりまく社会を反映して、ジェンダーや人種、体形をめぐって、画一的な美しさだけを推奨するのではなく、多様性をたたえる機運が高まってきました。
しかし、広告を観察していくと、ルッキズム(外見至上主義)のルールに、ジェンダーや体形にまつわる価値観がオプションのように加えられただけで、美容産業が作り出す表象が、ルッキズムに加担していることがみてとれます。
――男性の脱毛広告はどうですか
男性の脱毛サービスは201…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル