固められたばかりの鉄がローラー台の上を流れていく。ゴーン、ガーンと響く音。工場内を満たす熱気――。小学校の社会科見学で訪れた製鉄所のイメージが頭に焼き付いている。
北九州市で生まれ育った右門悠汰(うもんゆうた)さん(18)は今春、高校を卒業して就職した。地元の日本製鉄九州製鉄所八幡地区が職場だ。日本の近代化を支えた官営八幡製鉄所がルーツ。「地域をずっと支えてきた企業」が誇りだ。父も同じ会社で高炉を担当する。
10代の新成人
18歳からは大人である。民法改正で、4月からそうなった。職を得て社会に踏み出した若者たちは何を思うのか。7月10日の投開票日に向け、参院選で各候補者が支持を訴えて声をからすいま、10代の新成人の声を聞いた。
就職か進学か。高校3年になる前、「好きな道を選べ」と親は言ってくれた。悩んだが「大学でやりたいことが見つからなかった」。求人票で父の会社を見て、慣れ親しんだ地元で勤めたいと思った。「福利厚生もしっかりしてるし、いい人が多いよ」と父に背中を押してもらった。
入社後の研修では、10人1組の班で動く。鉄板を切るガス溶接や、荷をクレーンのフックでつる玉掛(たまかけ)の講習などを受ける。「絵とかテキストを見ながら、イメージを膨らませています」
6畳一間の寮で暮らす。初めての一人暮らしが新鮮だった最初の1カ月は、高校時代の同級生でもある同期たちとランニングや筋トレをして息抜きしたが、最近は帰りも遅く、翌日に疲れが残ると思うとおっくうになってきた。母任せだった洗濯や掃除は、自分でやってみると大変だった。
インスタグラムやTikTokでおしゃれを勉強中。今年の夏は、ちょっといいTシャツを買いたい。自分の車もいつかほしい。初任給を受け取ってから、同期とクレジットカードを作った。決済アプリで買ったのは、カップ麺や洗剤。「大きな買い物はまだ怖くて」。ナイキのシューズは現金で買った。Wi―Fiが部屋になく、中学時代からの友だちとのオンラインゲームに不都合なのが目下の悩みだ。
参院選は話題にもならない…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル