昨年7月の西日本豪雨の被災地では、避難指示が出されていたが自宅にとどまり、命を落とした住民が多かった。この反省を踏まえ、内閣府は気象情報について5段階表示で危険度を端的に表す指標を導入。だが、今年6月の大雨で広島に全員避難を意味するレベル4が導入後初めて示された際、実際に避難した人は1%に満たなかった。最初の大雨特別警報が出てから6日で1年。教訓を生かすべきはずの避難をめぐる課題は多い。(鈴木俊輔)
「逃げなければ、という意識はあまりなかった」
地区全体が水没した岡山県倉敷市真備(まび)町。決壊した小田川の支流、末政川の東側に位置する自宅で被災した日当(ひあて)利久さん(65)はこう振り返る。
同町では7月6日午後11時45分に小田川南側に、7日午前1時半に同川北側に避難指示が出されたが、住民の多くは避難せず、自宅で夜を明かした。日当さんらも自宅で過ごしていたが7日午前6時半ごろ、近所の人の呼びかけで近くの介護施設に避難を始めた。
倉敷市が昨年12月、真備町の約2900世帯を対象に行ったアンケートでは、80%が「避難指示を聞いた」と回答した一方、43・1%が避難せずに自宅にとどまっていたと答えた。日当さんは「自分たちの住む地域が本当に逃げなきゃいけないエリアなのかわからなかった」と話す。
西日本豪雨では気象庁の気象警報や市町村の避難勧告・指示、河川事務所の氾濫警戒情報などが相次いで出され、住民の混乱を招いたとの指摘もある。内閣府は3月、災害の危険度を5段階にレベル分けするようガイドラインを改定した。
気象庁や各自治体は、ガイドラインに基づいて気象警報や避難勧告・指示に共通のレベルを併記することになった。「わかりやすく基準を示すことで、住民側の主体的な避難を促すことができる」と内閣府の担当者は話す。
だが、6月の大雨で全国で初めてレベル分けが示された広島県では、避難勧告が出て、全員避難を意味する「レベル4」が併記された対象の1市3町の計約46万1200人のうち、実際に避難したのは775人。避難率は0・17%だった。
湯崎英彦知事は会見で「災害が発生した場合、多くの方が巻き込まれかねない状況だった。低い避難率をどう変えていくかということは非常に大きな課題だ」と危機感を示した。内閣府の担当者は現状について「効果的な運用にはさらなる周知が必要」とした。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース