見えないからこそ、強くつながる 踊る私とあなたは「対等」だから

 東京都八王子市に住む西梨沙さん(39)のダンスパートナーは彼女の10歳年上だ。ともに練習を重ね、先日の大会でも優勝した。でも、彼がどんな笑顔で喜んでいたのかはわからない。目が見えない私と、目が見えるパートナー。一緒に踊り始めてから4年近くになり、気づいたことがあった。

徐々に失った視力 憧れたドレス

 競技ダンスを知ったのは、理学療法士として働いていた20代のとき。当時はまだ少し視力が残っていた。テレビにかじりついて、番組のなかでダンスに挑戦する芸能人の姿を追った。きれいなドレスにあこがれた。

 8年前、結婚して八王子に越してきた。視覚障害がある人と、目が見える人とがペアを組んで踊る「ブラインドダンス」の団体が市内にあることを知り、迷わず門をたたいた。

 5歳のころに判明した病気で徐々に視力を失い、今は少し光を感じられる程度。体を動かすことに自信はなかったが、音楽に合わせて踊るのが楽しく、のめりこんでいった。

 「見えないのにどうやって踊るの」と、よく聞かれる。体の位置や向きがわからなくならないよう、パートナーとなるべく手を離さないようにするのがポイントだ。ダンスの振りは、先生の手や足を触って少しずつ覚えていく。

 根岸浩人さん(49)は3人目のパートナーだった。「基本に忠実な、まじめなダンスをする人」。それが彼の第一印象だった。

初心者の自分でいいのか パートナーは49歳

 立川市に住む根岸さんは、ダンスを始めて1年半ほどだった。「経験豊富な西さんの相手が初心者の自分でいいのか」。出会ったころは不安だったが、ダンスへの一生懸命さは同じだった。

 「なんかひっかかるね」

 「ここ難しいね」

 ダンスをリードするのは、目の見える自分だ。練習は2人の仕事の合間を縫って、週に2~3回ほど。彼女の手を取って、この日は4時間近く練習を続けた。

 練習を含め西さんが外出するときはサポート役もつとめるように。ペア結成後にガイドヘルパーの資格を取り、NPOを通じて仕事としても彼女と接するようになった。

 2人の関係を揺るがす「事件」が起きたのは、そんなときだった。

 2021年10月に出場した…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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