過去最大となる約1トンの押収量を記録した静岡県南伊豆町の覚醒剤密輸事件の捜査は数年間に及んだ。警視庁は事件直前に国内で関与が疑われる人物の動きを察知して現場を急襲。海上保安庁が巡視船による警戒を続け、覚醒剤の流入を水際で阻止した。中国人が運搬役を担った今回の事件と同様、コカインなどでも外国人による密輸事件が相次いでおり、違法薬物の密売ルートは広がりをみせているといえそうだ。
捜査関係者によると、地元関係者から寄せられた情報を基に警視庁などが捜査を開始した。国内の捜査で、引き受け先に暴力団関係者の関与が浮上。密輸に向けた動きは昨年にもみられたが摘発には至らず、今年に入って再び確認されたという。
一方、警視庁などと合同捜査本部を組んだ海保は、船同士を接舷し、覚醒剤を移し替える瀬取りのタイミングを狙い、巡視船による監視を断続的に実施。警視庁などの情報に沿って警戒を強めていた。
船舶による密輸は一度に大量の違法薬物を運び込めるため、組織的な密輸グループは大きな稼ぎを得ることができる。また、四方を海で囲まれた日本では摘発のリスクも低いとされる。
瀬取りによる国内への覚醒剤密輸は、過去に北朝鮮ルートで相次いだ。平成13年に鹿児島県奄美大島沖で自爆した北朝鮮工作船は覚醒剤を運搬していたとされる。その後、日本の捜査当局は摘発を強化し、北朝鮮から陸路で中国国境地帯に覚醒剤が運び込まれる事件が急増した。
捜査関係者によると、日本国内に運び込まれた大量の覚醒剤は、暴力団などの国内ルートに一定量ずつ分配される。その後、複数の仲介組織を経て全国の繁華街などで密売されるのが一般的だという。
29年には茨城県沖で、瀬取りで密輸された覚醒剤約475キロが押収された。この事件では、指定暴力団住吉会系組長らが関わったとして逮捕された。また、昨年10月には、名古屋市の倉庫で台湾から船で持ち込まれたとみられる覚醒剤約340キロが見つかった。
厚生労働省の元麻薬取締官、小林潔氏は「覚醒剤を身に付けたり、スーツケースに隠したりして航空機で運び込むとしても数キロ程度。空港の数は限られており税関の警戒も強い。船舶による密輸は常態化している恐れがある」と分析する。
警察庁によると、全国の警察が押収した覚醒剤の量は30年まで3年連続で1トンを超えており、高い国内需要があるとみられる。一方で、近年の摘発件数は覚醒剤が減少しているものの、大麻やコカインは増加傾向にある。
捜査関係者は「大麻は若年層を中心に広がり、海外の歌手やスポーツ選手らの使用で『セレブドラッグ』と呼ばれるコカインは著名人の使用も確認されている。国内では多様な薬物が蔓延(まんえん)している」と指摘した。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
Leave a Comment