インターネットのライブ配信を見ながら、配信者であるライバーに金銭を送る「投げ銭」が若者を中心に急速に広まっている。対象はゲーム実況や音楽ライブ、ライバーとの雑談など幅広いが、無料のライブ配信も多いなか、なぜわざわざ金を渡すのか。1万人以上の心の悩みと向き合ってきた精神科医の井上智介さんに、人気の理由や、依存を避けるための対応策について解説してもらった。
――ライブ配信への投げ銭が数年前から広がり、はまり込む人も増えています。なぜなのでしょうか。
投げ銭の特徴として、手軽に他人とつながることができるという点があります。人間は本来、人とのつながりを求める動物です。これを所属の欲求と言いますが、寂しいときほどこの欲求は高まり、他人という存在が必要になってきます。
投げ銭はお金を少し使うだけでそうした欲求を簡単に解消できるので、非常に都合がいいツールというわけです。
――投げ銭をすることでライバーとつながる、ということでしょうか。実際、ライバーから「ありがとう」と話しかけてくれることもあります。
もちろん、ライバーが自分の存在を認めてくれてうれしい、ということはあると思います。
ただ、それだけではなく、ほかに一緒に応援する仲間がいることも大きいと考えます。チームの一員として所属している感覚があり、その中で投げ銭をして目立てば、優越感も感じられます。
さらに、コロナ禍で孤独を感じる人が増えているということも背景にあります。とくに若い世代が多いのですが、在宅勤務だと会社に所属している意識も薄まるため、代わりにオンラインで欲求を満たしているのではないでしょうか。
SNSの普及やコロナ禍は、私たちが持つ欲求に変化を与えました。記事後半では、親のカードを使って数十万円使ってしまった女子高校生の事例を紹介し、投げ銭やSNSに依存することのリスクと、どう対処していけばいいのかについて触れています。
罪悪感を感じてもやめられず
――他人から認められたいという承認欲求も、SNSの普及で強まったと言われています。
そもそも、実生活で他人から…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル