長崎市滑石(なめし)地区に暮らす美術家夫妻が手作りする地図が人気だ。イラスト入りでお店を詳しく紹介した地元愛たっぷりの「滑石ぷらぷら地図」。初版の発行から7年、住民の評判を呼び、地域に根づいてきた。
6版目となる「2019春版」は見開き縦約40センチ、横約55センチのタブロイド判。遊ぶ子どもたち、ビール、猫、龍踊(じゃおどり)の龍……。ところ狭しと地名やお店、それらの由来とイラストが並ぶ。「時差式信号なので、車にはご注意を!」「スキーのジャンプ台のような急坂『遅刻坂』があります!」などの書き込みもある。
裏面の上半分には、お店のイベントや営業案内をまとめた。下半分では、小学校の校長先生や鮮魚店の店員ら、地域の人の「おすすめ本」を紹介。それらの本にまつわるイラストも独特で可愛らしい。地元の書店には地図に登場する本のコーナーもつくられた。
地図をつくるのは美術家の中島洋和さん(50)と、のざわのりこさん(45)夫妻だ。滑石地区で育った中島さんが文や構成を考え、漫画「はじめての長崎」などで知られるのざわさんがイラストを担当する。
きっかけは中島さんらが開く子ども向けの美術教室。市内の別の地区から来た数人の保護者に「子どもを待つ間、1時間ぐらい時間をつぶすところはないか」と聞かれたことだ。中島さんは初め、簡単な地図を書いて口頭で説明していたが、たくさん情報を伝えられる詳しい地図をつくろうと思い立った。
コンセプトは「読みものとしての地図」。手に取った人が、紹介文を読んでお店に足を運びたくなるようなものをめざした。
滑石地区は、長崎市北部の丘陵地帯に広がる住宅地で、約3万人が暮らす。東西3キロ、南北1・5キロほどの地区を2人で歩き、新たに得られたデータを更新していった。「回るたび、町の表情も変化している」
2012年の第1版は約3千部発行。登場するお店に配ると、客が持って帰ってすぐになくなった。地区外の人向けのつもりだったが、地元の住民たちも「こんなお店があったのか」と楽しんでくれた。
「2019春版」は2月下旬から約2カ月かけて制作。読みやすさを考え、今回からタブロイド判にした。1万部発行し、4月下旬から地区内の店舗や公民館などに配った。
中島さんは「地図を見て、行ったことのないお店に行き、新たなつながりをつくってもらえれば」と期待する。問い合わせはアートマンアトリエ(095・856・1744)へ。(米田悠一郎)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル