親父狩りにけんか、その私が厨房立つまで 社会復帰阻む「前科あり」

 服役による履歴書の空白に悩み、就職活動に前向きになれない。大阪府警によると、谷本盛雄容疑者(当時61)は事件の約5年前、就労相談に訪れた大阪市此花区役所でそんな姿を見せていた。「(前科が)殺人未遂だと告げると支援者の態度が変わって傷ついた」と話したという。

昨年12月17日午前、大阪市北区の雑居ビル4階のクリニックに男がガソリンをまいて火を付け、患者やスタッフら26人が犠牲となった。大阪府警は3月、通院していた谷本盛雄容疑者(当時61)を殺人や現住建造物等放火などの疑いで書類送検した(容疑者死亡で不起訴)。

 九州地方に住む40代の元受刑者の男性は、「私も履歴書に事実を書く勇気がなかった」と話す。詐欺に関わり、約10年前に3年半ほど服役した。

 逮捕が知られると、妻子が残る自宅に無言電話がかかってきた。妻は職場で「新聞見たよ。まだいるの」と言われ、退職の求めだと感じた。

 男性は出所後も前科を知られるのが怖かった。ハローワークではどの求人も履歴書が必要だ。それが要求されない派遣農作業員として数カ月働いてしのいだ。

 かつての職場の社長が「戻ってこい」と声をかけてくれた。前科を知る同僚の視線に耐える自信がなく、いったんは断った。だが、新しい仕事を覚えるのも難しく、最終的に元の職場に戻ったという。

お好み焼き店の厨房に

 昨年末に出所した玉田恭兵さん(34)は今、大阪市中央区のお好み焼き店「千房」の厨房(ちゅうぼう)に立つ。

 16歳で少年院に入った。成人後も仲間と「おやじ狩り」を繰り返し、25歳から5年間刑務所で過ごした。

 出所後、ハローワークに行っても仕事は決まらなかった。酒とたばこにおぼれ、酔ってはけんかした。暴行事件を起こし、昨年初めに再び収監された。

 刑務所内で出所後の仕事をあ…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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