年間約8500万人の観光客が訪れる京都府だが、その6割が京都市内に集中するなど、観光の偏重が仮題となっている。そうした中、京都市以外の地域にも観光客を呼び込もうと、京都府と府教育委員会が初めて企画したのが、寺院の国宝・重文建造物の修理現場と府南部の茶畑などの名所を組みあわせた観光ツアーだ。「再び参加したい」と答える参加者が8割を超えるなど満足度は高く、担当者は「もっと満足してもらえるような企画を」と継続に意欲を見せる。(園田和洋)
■「感激した!!」
ツアーは7月下旬から3コースで計6日間実施。8月には、萬福寺(京都府宇治市)の修理現場見学と日本遺産「日本茶800年の歴史散歩」に認定されている「石寺の茶畑」(同和束町)探訪のツアーが催された。37人の参加者は、午前9時にJR京都駅をバスで出発。約1時間かけて萬福寺に到着すると、修理現場と境内の2班に分かれて交代で見学した。
入り口の前でヘルメットをかぶった修理現場班は、足場の組まれた覆い屋に入り、府教委文化財保護課の担当者の案内で半解体修理のために屋根の骨組みがあらわになった伽藍(がらん)堂と鐘楼(しょうろう)=いずれも重文=を見学した。普段は目の高さでみることのない屋根の構造を目の前で見る迫力。大小の木材を組みあわせながらバランスを保たせる匠(たくみ)の技のすごさに感心しきりだ。今回の修理で交換された古いこけら板に竹釘を打ったり、木材にカンナをかけたりする体験も楽しんだ。
夫婦で参加した京都市西京区の土井重寛さん(70)は「もともと古い建物が好きで、どう建てられているのかに興味があったが、担当者からじかに説明を聞いて本当に感激した」と満足そうに話した。
■文化財の活用
文化庁は平成23年度から文化財を活用した地域活性化事業を行っているが、京都府の試みもこの事業の一環で、文化財の宝庫である京都にはふさわしい企画ともいえる。特に国宝・重文に指定されている建造物の修理現場の公開は、全国で京都と奈良、滋賀の3府県だけが行っており、まさにうってつけ。府教委文化財保護課によると、毎年秋に実施する修理現場の無料公開は、どの現場も定員を超える募集がある人気イベントだという。
そこで今回は中国風の伽藍が残る萬福寺を含む人気寺院の修復をターゲットにした。府がキャンペーンを進める府南部を中心にした「お茶の京都」事業とコラボさせ、京都市以外の観光地をアピールすることに。宇治田原町の日本緑茶の製法を考案した永谷宗円の生家や平安時代の九体阿弥陀像がそろう唯一の遺構「浄瑠璃寺」、多くの国宝・重文を抱える「海住山寺」(かいじゅうせんじ)=いずれも木津川市=など京都市内からはなかなか足をのばすことのないスポットを組み入れ、6月中旬に募集を始めた。
■反応は予想以上
実は募集が好調だったわけではない。3カ所の修理現場で2日間ずつの公開を決めたが、猛暑の影響もあってか45人の募集を上回った公開は一つもなかった。それでも府観光事業推進課の小西葉子課長は「参加者の反応は予想以上によかった。展開次第で今後は伸びる可能性がある」と評価する。
参加者のアンケートをみると7割は京都市内からの参加だが、京都府観光連盟のホームページなどを見て募集したのか九州や関東からの人も。加えて、参加者の8割以上が「再び参加したい」と答えるなど、満足度が高いことをうかがわせているという。府教委文化財保護課の森下衛課長も「熱心に話を聞いてくれて、こちらもやりがいがあった。毎年定期的に開催している秋の一般公開の前にでもできれば、もっと多くの人が来てくれるのでは」と期待を込めている。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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