北村有樹子
仏像の顔を化粧用のフェースブラシでなでてきれいにするユニークな法要が18日、京都市東山区の泉涌寺で初めて営まれた。その名も「メイクアップ法要」。
仏像は、寺が所蔵する国の重要文化財「楊貴妃観音像」。法要では、お経が読まれた後、僧侶の熊谷道玄(どうげん)さんがブラシを手に取り、仏像の左ほおをなでた。重文ということもあってか、「緊張した。これほど観音様に近づいたことがなかった」と熊谷さん。
使われたブラシは、1本が税込み22万円の新商品だ。ヤギの上質な細い毛を使っており、商品名は「楊貴妃」という。
ブラシ開発の中心を担ったのは、メイクアップアーティストの中野剛章(よしあき)さん(52)。海外有名ブランドのジバンシイで専属メイクアップアーティストとして長年活躍してきた。
中野さんは、かつて寺を訪れた際に「観音像の美しさに恋に落ち」、ブラシのアイデアをひらめいたのだという。
京都・西陣織の箔(はく)工芸作家の裕人礫翔(ひろとらくしょう)さん、熊野筆の製造販売会社「晃祐堂」(広島県熊野町)と協力。作り上げたブラシには、コロナ禍で閉塞(へいそく)感が漂い、マスク姿が日常となる中、「人々に笑顔が戻りメイクを楽しんでほしい」との願いを込めたという。
「観音様が笑っているように見えた。涙が出るほどうれしい。喜んでいただけたのでは」。法要に参加した中野さんは、そう話した。
作ったブラシは楊貴妃のほかに「クレオパトラ」「小野小町」も。世界三大美人がテーマだ。どれも1本税込み22万円で、それぞれ100本を発売。問い合わせは中野さんが代表を務める会社「N2-luana」(045・530・5507)へ。(北村有樹子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル