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原爆投下から75年を迎えた広島で6日、平和記念式典が開かれました。核問題に関する取材を20年以上続けていて、記念式典にも毎年通っている共同通信社編集委員・太田昌克さんの報告です。 これほど静かな式典は初めてでした。毎年、数万人、全員で合唱する『ひろしま平和の歌』も、被爆ピアノと女学生4人による演奏・歌唱。静寂さの中に清らかさが漂って、その音色が天空へとまっすぐに響き渡りました。私がお世話になった被爆者の恩人に、この音色が真っすぐに届いてほしい。そう念じながら聞いていました。私は、この10年間、被爆者・児玉光雄さん(87)と奥様の3人で毎年参列してきました。児玉さんは爆心地から約900メートルの広島第一中学で被爆。半数が死亡するという放射線を浴び、20回以上のがんに苦しまれた。広島一中は、生徒ら369人が被爆死。19人が復学できたのですが、その後、原爆症を患うなどして18人が亡くなり、児玉さんは唯一の生存者でした。児玉さんは先週、緊急入院し、今年は参列できませんでした。電話したら、絞り出すような声で「今の状況が残念で、残念でならない」と言いました。 毎年、約9000人の被爆者が、この世を去っていきます。今年3月末で存命の被爆者は13万6682人。次の四半世紀に、場合によっては、被爆者がいなくなる世界が来るかもしれない。風化に抗して、いかに“人類唯一の被爆体験”を継承していくか。我々、受け手の側の責任がますます問われていくと思います。 ※日本政府は、常々「立場の異なる国々との橋渡しをする」としていますが、実際、果たしているのでしょうか。 そこは大いに疑問です。むしろ政府は、近年アメリカの“核の傘”への依存を深めているとみています。象徴が核兵器禁止条約への冷たい態度です。日本はトランプ政権への配慮もあり条約交渉にすら参加しませんでした。
核使用のリスクは、減少するどころか増しているとみる専門家が少なくありません。米ロの質的な核軍拡競争、中国や北朝鮮の核戦力増強。それに加え、AI=人工知能やサイバー、極超音速兵器などの新しい技術が加わり、核をめぐる秩序が混沌とした状態になっています。 こうしたなか、被爆国・日本の政府はどう動くべきか。3つ挙げたいと思います。まず、75年続いた“核使用のタブー”の堅持です。『核は生身の人間に絶対使ってはならない』この規範を繰り返し、世界に訴えていくことです。
次に『核の役割を減らす努力』です。そのために核に依存しない、安全保障を目指した政策研究を行う必要があります。 最後に、核兵器禁止条約の理念を明確な支持し、批准への環境整備を進めていくこと。『核廃絶のロードマップ作り』への参加を、アメリカを含めた全核保有国に呼び掛けることも大事です。 こちらが核に依存する政策を取れば、これを脅威に思う相手も核にしがみついてしまう。そうなると永遠に“核なき世界”はやってこない。核抑止を絶対視する思考停止ではいけない。
日本は人類全体に対して、歴史的な使命、責務を負っていると思います。広島で亡くなった多くの被爆者、長崎で亡くなった多くの被爆者。ぜひ、その無念に日本政府が真摯に、真剣にもっと向き合ってほしいです。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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