根岸拓朗
1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件の記録が廃棄されていた問題で、事件の遺族の土師(はせ)守さん(66)が14日、記録の保存・廃棄のあり方を検討している最高裁の有識者委員会に出席し、原因究明や再発防止を求めた。会議後の会見で、土師さんは「この事件の記録が捨てられることは想像していなかった。一般国民と司法の常識がずれている」と語った。
土師さんは、当時14歳だった加害男性に次男の淳さん(当時11)を殺された。社会に衝撃を与えた事件だが、神戸家裁が全ての記録を捨てていたことが昨年10月に神戸新聞の報道で発覚した。家裁の説明によると2011年2月28日に廃棄されたとみられる。
会議で土師さんは委員らに対し、廃棄への驚きや憤りを伝えたうえで、事件に対する犯罪被害者の「知る権利」を保護する記録保存や開示のあり方を検討すべきだと訴えたという。最高裁の小野寺真也・総務局長からは廃棄について謝罪を受けたという。
読めないままだった記録
この事件などを契機にした少年法改正で、少年犯罪の被害者は加害者や保護者らの供述調書、少年審判の調書など一部の記録の閲覧やコピーが3年以内はできるようになったが、土師さん自身は記録を全く読めないままだった。「なぜ子どもが命を奪われなければいけなかったのか。(将来の法改正などで)記録を見られれば理由に少しでも近づけると淡い希望を持っていたが、それも持てなくなった」
問題の発覚後、最高裁は神戸家裁などの廃棄の経緯を調べてきたが、この日、土師さんに調査結果は説明されなかった。最高裁は有識者会議での議論を続け、4月ごろに報告書をまとめる方針だ。土師さんは「誰かがきちんと声を出さなければ、今後も同じようなことが続くと思う。最高裁は経緯を解明し、十分な管理体制のもとで記録を保存してほしい」と語った。(根岸拓朗)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル