東京都の小池百合子知事が今月、コロナ下では初となる2年9カ月ぶりの海外出張を行った。訪問先は中東。ところが、進展させるはずだった重大任務は果たせず、都にとって悔いが残る結果となった。
「結果的に、大変有意義な出張だったと思う」
18日午後、約10時間のフライトを終えて成田空港に到着した小池知事は疲れた様子も見せず、集まった記者団にそう語った。
エジプト留学経験もある小池知事が今月15日から4日間の日程で訪れたのは、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビだ。ハリファ大統領の急逝を受けて就任したムハンマド新大統領ら要人と次々面会するなどし、「非常に好待遇を受けてくることができた」と満足げだった。
ただ、中東出張はもともと、UAEだけでなく近隣のクウェートも訪れ、新型コロナにも絡むプロジェクトを進めることが大きな目的だった。それが、出発の直前にUAE大統領が急逝した影響で急きょ予定変更に。そのことに話が及ぶと小池知事は「クウェートには改めてうかがいたい。どのタイミングが良いのか、連携を取りながら模索する」と仕切り直す方針を示した。
知事がそこまでクウェート訪問にこだわるのは、都が注力してきた「東京発」の国産ワクチン開発に光を見いだせる可能性があるからだ。
このワクチン開発事業は、都が全額出資した公益財団法人・東京都医学総合研究所(医学研、世田谷区)が2020年春に着手した。これまでに都が計2億円の補助金を支出したほか、国立の日本医療研究開発機構(AMED)も2年間で5億円の補助金を出してきた。
高まる都庁の期待 だがネックが…
医学研によると、このワクチンの特徴は、1回の接種で長期間、さまざまなウイルスに対する免疫を獲得できる、というものだ。天然痘ワクチンの成分を活用して開発。抗体に加え、ウイルスを直接攻撃する「細胞性免疫」を作ることができるという。
これにより、すでに判明して…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル