薬物事件の証拠品となるDVD内の動画データが破損していた問題で、覚醒剤取締法違反(使用)罪に問われた男の弁護団が1日、東京地裁での初公判に合わせて会見し、破損の原因や捜査の適法性について「裁判官は警察の不正はないはずという予断を持たずに判断してほしい」と訴えた。
この日の初公判で男の無罪を主張した弁護側は、男が逮捕された昨年1月8日、男の車にあったペットボトルを警察官から渡されて男が飲み、その水に、男の知人女性が使った覚醒剤が混じっていた可能性があると指摘。「被告自らがすすんで摂取していない」と訴えた。女性は男の確保中に逃げ出したという。
そのうえで、破損した映像データには、男や女性、警察官の行動が記録されていたはずと説明。警察が女性を取り逃がしたり警察官が男を転倒させたりしたなど「不都合な場面があった」と述べた。
弁護側 「無理な捜査、ぼろが出る」と批判
男の逮捕後に検察側が押収したペットボトルや水を分析したところ、覚醒剤成分や男のものとみられる唾液(だえき)成分が検出されたという。弁護側はこの水は男が当時飲んだものだと主張して「無理な捜査には必ずぼろが出る」とも述べた。
これに対し検察側は、男が飲んだペットボトルは未開封と反論。映像は取り押さえる直前までしか撮影していないと主張した。
検察側の解析などでは警視庁愛宕署で保管中にデータが破損しており、弁護団が同署警察官を証拠隠滅容疑で告発している。この警察官らの証人尋問も今後行われる予定。(新屋絵理)
証拠管理「内規でなく立法化を」 専門家が指摘
捜査機関の証拠管理は、検察や警察の内規に委ねられているのが実態だ。
警察の捜査の心構えなどを定めた国家公安委員会規則「犯罪捜査規範」は、捜査資料について「適切に管理し保管の必要がなくなれば確実に破棄」すると規定。警察庁の通達では、証拠を帳簿に記して管理するよう求めている。
ただ今回の場合、破損したデータを含む計14枚のDVDは事件から1年以上帳簿に記載されず、保管されていたのも警察署内の鍵のかかっていないロッカー内だったという。
龍谷大学の斎藤司教授(刑事訴訟法)は「国家権力を使って集めた証拠は、少なくとも捜査機関だけのものではない」と説明。今回の裁判は証拠管理のあり方も問われているとしたうえで、「安全な証拠管理を目指すため、内規ではなく新たに立法化すべきだ」と指摘した。(新屋絵理)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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