サイバー攻撃やサイバー犯罪に対応するため、警察庁が国際的な連携への取り組みを強める。今春の設置をめざすサイバー局とサイバー隊を中心に、これまであまり関わってこなかった国際共同捜査への参加も積極的に進めていく考えだ。
サイバー犯罪の捜査では、各国の治安機関による共同オペレーションが一定の成果を上げている。
欧州警察機構(ユーロポール)が主導したコンピューターウイルス「Emotet(エモテット)」壊滅作戦では、ハッカーの活動拠点を捜索するなどして、昨年1月に感染のネットワークの機能停止に追い込んだ。
過去には日本が加わった例もある。
2014年、「Game Over Zeus(ゲーム・オーバー・ゼウス、GOZ)」と呼ばれたウイルスに世界で約100万台の端末が感染しネットバンキングの不正送金に使われた事件では、警察庁も壊滅作戦に加わり、国内の感染端末の駆除を進めた。
国際刑事警察機構(ICPO)の呼びかけで各国が取り組んだもので、捜査関係者によると、日本はこれ以降も数件の国際共同作戦に参加してきたという。
しかし、最近の大規模な共同作戦には乗り遅れている。エモテットは日本でも被害が出ていたが、参加できなかった。関係者は「誘いがなかった」と明かす。
日本で被害が出た事件の多くは、海外にあるサーバーが攻撃に使われた。そのため、他国に契約者情報を照会するなどの捜査共助が必要だ。だが、回答が来なかったり、時間がかかったりすることは少なくない。また、重要インフラ事業者などを狙う攻撃には国家レベルが関与している疑いも指摘されている。
世界中で被害が深刻化している身代金ウイルス(ランサムウェア)については、21年12月に主要7カ国(G7)の高級実務者による会議が開かれ、共同して対応していくことを確認した。
捜査に臨む体制の違いもある。
欧米をはじめとする各国では、国の機関がサイバー犯罪の捜査を担う。これに対し、日本はあくまで都道府県警が捜査し、警察庁は調整や国際共助の手続きなどに関わる立場だ。
警察庁が進めているサイバー局やサイバー隊の設置計画では、国が直接捜査を担うとしており、これによって国際連携も進める狙いがある。
警察庁幹部は「各国がばらばらで捜査するだけでは攻撃者の特定や摘発に至るのは難しい。各国間の信頼関係に基づき、情報を共有して共同で捜査するのが不可欠だ」と話す。「捜査共助がスムーズになれば海外の機関との信頼関係ができ、それにより共同オペレーションへの参加も円滑に進む」と期待する。
警察庁の有識者会議はこのほどまとめた報告書で、サイバー隊が前面に立ち、戦略的に国際捜査を進めることを提言した。22年度には欧州に初めてサイバー専門の連絡担当官を派遣する方針だ。
計画では、サイバー局は情報などを担当するサイバー企画課、捜査を指揮するサイバー捜査課、データ解析を担う情報技術解析課などで構成される。警察庁が直接捜査するサイバー隊は約200人の態勢で関東管区警察局に設置する。サイバー隊は自ら捜索・差し押さえ、容疑者の逮捕などにあたる。(編集委員・吉田伸八)
サイバー犯罪の国際共同捜査の例
2014年5月~
欧州警察機構(ユーロポール…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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