今年8月、島根県の立正大淞南高校で、生徒や教職員ら108人が感染するメガクラスターが発生。そのうち40人が入院したものの、いずれも軽症で学校は9月1日から再開した。しかしその1ヶ月間、学校と生徒は誹謗中傷や偏見・差別に苦しめられた。 【画像】ユニフォームカラーに合わせた黄色の布に応援メッセージも 「ポストコロナの学びのニューノーマル」第18回では、学校が政府に提出した報告書をもとに、クラスターが発生した学校に何が起こり、その時学校は何をするべきかを検証する。
「記憶のフラッシュバックだけは避けたい」
学校が10月、政府に提出した報告書「メガクラスター対応時の偏見・差別対策とプライバシー保護の取り組みについて」。 ここには8月5日に生徒の発熱が確認されてから、9月1日の学校再開までの約1ヶ月間、学校関係者が感染対策や生徒のケアだけでなく、誹謗中傷や偏見・差別にどう向き合ったのかが刻銘に記されている。 この報告書は政府のワーキンググループの依頼を受け学校が作成した。 「他の学校への情報提供になれば」と筆者の取材を承諾してくれた教頭の上川慎二氏はこう語る。 「私たちは生徒を守るためにあらゆる手を尽くしてきました。この報告書はその過程の中で感じたことをまとめたものです。しかし資料を作成することで1番心配だったのは、本校の生徒だけでなくコロナによる偏見・差別で苦しんだ多くの人々の記憶が、フラッシュバックして嫌な気持ちになってしまうことです。それだけは避けたいと思いました」 学校では当初報告書を広く外に出すつもりはなかったと上川氏はいう。 「この件に関する取材依頼がたくさんあったのですが、とにかく生徒を守らないといけないと断ってきました。誹謗中傷は誹謗中傷を生み、それに生徒が巻き込まれて前に進むことができなくなることが嫌だったのです。ただ一方で支援してくださった方もたくさんいました。そうした多くの支援があったことを知って頂きたいという想いもありました」
「人権尊重と個人情報保護への配慮を」
報告書によると、学校ではクラスターの発生当初、医療関係者から「これは災害レベルです」と言われた。保健所などと協議しながら陽性者への対応を行い、全生徒と教職員はPCR検査を受け、学校と寮のロックダウンを行った。 そして生徒の陽性が最初に判明してから3日後の11日未明、濃厚接触者だった校長らが陰性であることが分かるとすぐに記者会見を行った。 校長は記者会見でこう強調した。 「厳しいご意見やお叱り、処罰を求めるご意見もありますが、今回のことは生徒の落ち度ではなく学校の感染症対策の不備に起因しており重く受け止めています。誹謗中傷を大変心配しており、生徒・教職員とその家族、学校関係者への人権尊重と個人情報の保護にご理解とご配慮をお願いします」 学校は生徒の日常を取り戻すこと、罹患した生徒や教職員の健康回復を何よりも優先にした。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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