富永鈴香、吉村駿
特殊詐欺の電話に「だまされたふり」をして、容疑者の逮捕に貢献したとして、京都府警亀岡署は26日、京都府亀岡市の杉宏人さん(83)と妻のふみ子さん(76)に感謝状を贈った。結婚50年の夫婦の連係プレーが逮捕につながった。
先月28日午後6時半ごろ、宏人さんが家でテレビを見ていると固定電話が鳴った。「杉さんは詐欺の被害者です。亀岡署員がキャッシュカードを家に取りに行きます」。男の声でやけに早口。相手が一方的に話すだけで会話にならず、時折、電話越しには異様に大きいパトカーのサイレン音が聞こえた。「これってよくニュースで見る警察官を装う詐欺じゃないか」と気づいたという。
夫婦で引き延ばし作戦
その時ふみ子さんは外出中だった。宏人さんは通話を引き延ばし30分ほど話した。ふみ子さんが帰宅すると、詐欺犯と電話中だった宏人さんが受話器を押さえながら「今から詐欺の犯人が家に来る。すぐに110番して」と小声で言った。ふみ子さんはすぐに携帯電話で110番通報した。帰宅途中、家のそばに見慣れないジャンパー姿の若い男が立っていたことも伝えた。
直後、自宅には警察官を名乗る男が訪れた。ふみ子さんが見たジャンパー姿の男ではなく黒いスーツ姿の男。偽の警察手帳を見せながら「亀岡署のアサクラです。キャッシュカードを取りにきました」。
宏人さんは「妻が110番してくれたし、すぐに本当の警察官が来るはずだから」と思い、だまされたふりをしたまま、男をリビングに通した。
3分後、亀岡署員が到着。受け子の男は、ぼうぜんとしたまま、夫妻の目の前で現行犯逮捕された。同署によると、ふみ子さんが伝えた「ジャンパー姿の男」は、受け子の見張り役とされ、この男も逮捕された。
感謝状を受け取った夫妻は「高齢者を狙う詐欺は許せない。逮捕に貢献できて良かった。2人で表彰を受けたのは初めてで、改めてうれしい」と話した。
亀岡署の建井秀之副署長は「2人の迅速な110番に感謝している。キャッシュカードや暗証番号などを尋ねる電話があればすぐに110番してほしい」と話している。(富永鈴香、吉村駿)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル