全国12の会場で熱戦が繰り広げられているラグビー・ワールドカップ(W杯)。10月5日に日本戦が予定されている豊田スタジアム(愛知県豊田市)は、大会中は別名称で呼ばれていることを知っていますか? スタジアムにまつわる、意外と知られていない話題を集めてみました。
W杯開催前の今月初め、豊田スタジアムで、正面に掲げられていた「TOYOTA STADIUM」という文字盤が撤去された。
2001年の完成以来、「豊(とよ)スタ」の愛称で広く知られている豊田スタジアムだが、W杯では、この名称は使えないためだ。W杯での名称は、「City of Toyota Stadium(シティーオブトヨタスタジアム)」。大会の公式HPなども同じ表記で統一している。
国内向けの発表資料では「豊田スタジアム」という名称を使っている豊田市も、対外的な英語の案内文書では前述の自治体名を強調した表記にしているという。
なぜ「豊田スタジアム」ではだめなのか。市などによると、W杯に向けて準備を進めていた16年6月、主催する国際統括団体ワールドラグビー(WR)から大会組織委員会を通じて「指示」があったという。明確な理由は示されていないが、W杯の最上位スポンサー、ワールドワイドパートナーに、英国の自動車メーカーが入っていることを考慮したとされる。
豊田市はトヨタ自動車のおひざ元。スタジアムの建設にトヨタはかかわっておらず、ただの地名だ。それでもW杯は、前回15年のイングランド大会の期間中に世界で40億人以上が視聴したとされる大イベント。「『トヨタスタジアム』と連呼されたらトヨタ自動車をPRをしていると受け取られかねないからまずいだろう。うちとしては従うだけ」と市幹部は言う。
豊田スタジアム以外の国内11カ所の会場はどうなっているのか。大会公式HPの英語表記を確認した。東大阪市花園ラグビー場は、「Hanazono Rugby Stadium(ハナゾノラグビースタジアム)」、神戸市御崎公園球技場は「Kobe Misaki Stadium(コウベミサキスタジアム)」などとなっている。
一方、日産自動車が命名権を持ち、「日産スタジアム」とも呼ばれる横浜国際総合競技場は、「International Stadium Yokohama(インターナショナルスタジアムヨコハマ)」となっている。
もう動かない開閉式の屋根
豊田スタジアムを見ると、蛇腹のように折り畳まれた大きなシートが屋根と屋根の間に張られているのがわかる。ピッチを覆うことができる開閉式の屋根膜だ。
面積は1万9400平方メートル。ポリエステルの繊維膜でピッチを全面、覆うことができ、かつては雨天の試合で使われていたが、2013年度を最後に停止している。
「部品の老朽化で修理にお金がかかり、止めました」と豊田市スポーツ課の担当者。屋根を閉じるには専門の技術者が必要で、約50分かかる。芝生に悪影響があり、音響が悪くなるなど費用対効果の悪さも災いした。将来は撤去する方針だが、大きすぎることがネックで今も撤去方法を検討中という。10月12日までの残り3試合で秋の雨に見舞われても、選手や観客は耐えるしかない。
このほか、大型映像装置2基のうち、中央のピッチ上へ移動させることができた1基も、屋根と同じく停止中で動かす予定はないという。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル