豚コレラの感染拡大を受け、農水省が地域を限定して飼養豚へのワクチン接種を検討していることが1日、分かった。一定地域の全ての豚に接種し、豚や豚肉製品の流通を域内に限定することが前提で、県単位での厳格な流通管理が必要になる。接種の判断には合意形成と流通管理の体制整備が欠かせず、接種を判断した場合、各県は難しい対応を迫られる。同省は県単位での接種の是非を慎重に見極める考えだ。
現行の「豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」は、まん延防止のための「緊急ワクチン」は認めているが、殺処分を前提としない予防的なワクチン接種は認めていない。同省は指針の改正を検討している。
今回検討している手法では、接種した地域の豚は殺処分せずに出荷できるが、接種した地域は国際獣疫事務局(OIE)の「非清浄地域」となり、流通が域内に制限される。一方、接種地域以外は、引き続き「清浄地域」として認められ、輸出を継続できる可能性がある。
接種した豚の流通を域内に制限するのは、野外のウイルスに感染した豚と、ワクチン接種豚の区別が難しく、感染した豚を発見できないまま域外に出荷してしまうことで感染が拡大する恐れがあるためだ。
一方、販路が制限されることで養豚農家に負担が生じ、県なども流通管理のためのトレーサビリティー(生産・流通を追跡する仕組み)を確立しなければならないなど課題は多い。同省はワクチン接種に伴うメリット、デメリットを踏まえ、慎重に検討する考えだ。
この手法では発生多発地帯でも感染のリスクが低減し、一定の制限の下で経営継続が可能。半面、「感染を拡大させる要因となっている野生イノシシがいる限り、問題は解決しない」(同省関係者)との見方もある。
日本農業新聞
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