昨夏の熊本豪雨など、積乱雲が次々と発生して激しい水害をもたらす線状降水帯について、気象庁が今夏から、九州など一部地域で発生の予測を始める。豪雨の危険性が高まった場合には事前に発表する方針で、危険性を少しでも早く伝えて避難時間の確保につなげたい考えだ。この予測のため、観測船を東シナ海に今年の梅雨時期から派遣して観測態勢を拡充する。
線状降水帯は、水蒸気を大量に含んだ空気によって数十~数百キロに及ぶ積乱雲の列が発生し、風の通り道となった地域に積乱雲がかかり続けて激しい雨が降る現象。気象庁はレーダーなどで降水量を監視しており、線状降水帯の発生が確認できれば、新年度から発生情報を発表することを決めている。
ただこの発表は予測ではないため、発表時点ですでに大雨になっている。すでに河川の氾濫(はんらん)や土砂災害が差し迫っている可能性も高く、避難での有効性は限定的とみられていた。
一方、線状降水帯の発生予測は難しく、昨夏の熊本豪雨でも半日前に予測できた3時間雨量は最大128ミリで、実際の約330ミリとは大きく違った。これは、予測に欠かせない風上の水蒸気量のデータがほとんどないためだ。特に九州は、風上が東シナ海など海上のことが多く、観測が手薄になっていた。
そこで、気象庁と気象研究所は昨夏、観測船「凌風丸」を鹿児島県の西約400キロの東シナ海上に派遣。熊本豪雨が発生した際にも水蒸気量などを試験観測した。予測には使えなかったが、帰港後にスーパーコンピューターで再計算したところ、3時間雨量の予報は202ミリとなり、実際の雨量に近くなった。豪雨が予測された地域も、当時の予測はかなり東だったのが、熊本県南部に近づいた。
気象庁は海上観測が有効だと判断。今年の梅雨の時期以降、線状降水帯が多発する九州で先行的に予測することを目指し、観測船2船を東シナ海などに長期間派遣することを決めた。2月に立ち上げた線状降水帯予測の専門家会議で船の派遣地点を議論している。観測データはリアルタイムに伝送し、予測に生かす。
やはり線状降水帯が多発した2…
2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル