市幹部「下請け、孫請け知らなかった」
九州豪雨で被災した福岡県朝倉市の復旧工事を巡る贈収賄事件は、収賄容疑で同市復興推進室係長の鎌田好輝容疑者(49)が逮捕されて21日で1週間。市の内規が制限している「下請け」や「丸投げ」の実態について、市幹部は「事件が起きて初めて知った」と証言。災害後の混乱で、実務に精通した鎌田容疑者が独断で遂行し、市は不正や癒着を見抜けなかった。同じく丸投げなどを禁じる熊本県益城町などの被災地からも「あり得ない」と疑問の声が上がる。 【写真】朝倉市役所へ家宅捜索に入る福岡県警の捜査員たち 「下請け、孫請けが入っていたとは全く知らなかった」。鎌田容疑者の逮捕後、朝倉市幹部は西日本新聞の取材に証言した。
同市黒川地区の土砂・土木撤去工事は昨年5月、緊急性が高いため、市は入札ではなく、施工能力がある業者を指名する「特命随意契約」で建設会社が受注。同社は、山口慎二容疑者(49)=贈賄容疑で逮捕=が役員を務める防水設備会社「九州防水」(同県久留米市)に発注した。 九州防水はさらに別の産業廃棄物処理会社に丸投げし、工事代金の一部をキックバックさせ、数千万円の利益を得たとみられる。鎌田容疑者は山口容疑者の働き掛けを受けて工事範囲を広げ、約9千万円だった事業費を約4千万円増額するなどの便宜を図り、謝礼として現金100万円を受け取っていた疑いがある。
捜査関係者や市によると、工事は鎌田容疑者がほぼ1人で事業費の積算などを担当。貴重な技師に業務が集中し、熊本地震の被災自治体への派遣経験から復旧工事に精通していた。 建設会社の社長は事件後、市に対し「九州防水に丸投げはしていない。管理監督をして、元請けの責任は果たしている」と説明。ただ、内規では工事の一部下請けでも市の承諾が必要だ。市幹部は「承諾はなかった」と語る。 膨大な復旧工事をこなす中で、契約や工事の過程は鎌田容疑者と業者だけが知る“ブラックボックス”になっていた可能性が高い。 益城町の担当者は「(特命随意契約は)施工実績などを考慮した業者指名だ。全く別の業者が施工するなら適正性が確認できない」。熊本市も「丸投げは工事の品質確保の観点から禁止しており、発注者を裏切る行為。事実なら朝倉市の事例は特異だ」と話す。 「チェック態勢が甘かったと言われればそれまで。責められても何も言えない」と朝倉市幹部は声を落とす。捜査関係者は「人材難もあるだろうが、鎌田容疑者1人に任せきりになっていたのが良くなかった。計画的な人材育成をしていれば違っていたかもしれない。自治体の構造的な問題が背景にある」と話した。 (森亮輔、横山太郎、小川勝也)
最大限のチェック機能を
佐賀大の畑山敏夫名誉教授(政治学)の話 適正な技術を担保に特命随意契約で業者を指名するため、予定外の業者に下請けや丸投げすると、質が保てず、工事に瑕疵(かし)があった場合には責任の所在も不明瞭になる。工事の原資は大事な税金だ。不正を防ぐには極力、特命随意契約をしないか、やむを得ない場合は契約後に定期的な検査をするなど最大限のチェック機能を働かせなければならない。近年は毎年のように全国で豪雨などの災害があり、他の自治体も人ごとではない。今回の事件を教訓に再発防止策を考え、自治体間で共有するべきだ。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース