春の日差しをカーテンで遮り、男性(25)は何もする気になれず、手元のノートをカッターでカリカリと引っかいていた。「おれの人生、なんかいいことなかったのかな」。何げなく1冊のアルバムを引っ張り出し、そこに貼られた手紙に目をやった。
〈君は『自分は負けばっかりだー』とか言ってましたが、そんなことはないと思いますけどね〉
細かな字でこう書いてくれたのは、10年ほど前の同級生の女子だった。島の中学で机を並べ、転校する時にもらった。〈会えてよかったです〉。あのころ自分は、家族の不和を隠して明るくふるまい、漫画を描いて気を紛らわせていた。
セーラー服を着ていたころの彼女の顔が浮かぶ。〈自分の好きなようにすればいいんじゃない? 偉そうにすみません〉
言葉が染みこんだ。
ペンをとり、やるべきことを決…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル