貧困、不登校、多様性… 制服の「おさがりの輪」から見えた景色

 5月、まもなく衣替えの季節だ。金沢市のビルの一室で夏の制服をチェックしながら、池下奈美さん(44)は思う。「必要としている一人でも多くの子どもたちに届けたい」

 石川県内の幼稚園や小中高校のリユース(再使用)の制服を販売する「リクル」(https://recle.info/)の代表。2017年1月にホテルの一角を借りて営業を始め、今のビル1階に移って5年。30着ほどだった在庫はいま、金沢市と能美市の2店舗に計6500着以上ある。多くが定価の3割ほどで買える。

 開店のきっかけは、15年夏だった。中学1年生の長男が新品の制服ズボンの両ひざに大きな穴を開けて帰宅した。お直しは無理だと感じ、思わず怒鳴った。

 「何してくれらん!(どうしてくれるの)」

 おさがりをくれるママ友はいない。1万円ほどの新品を買うしかなかった。ズボンが破れるほど元気に遊んだ長男を叱ってしまった。自責の念に襲われ、思い立った。「同じように困っている人はいる。『制服を誰かに使ってほしい人』と『安く制服を買いたい人』をつなぐ場所をつくろう」。店名は「リユースのおさがりをクルクル回す」から「リクル」にした。

新品同様の制服を持ち込む理由

 7歳の時に父を亡くし、母子…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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