2017年3月15日、大阪・中之島の関電本社ビル。前年に就任した関西電力の岩根茂樹社長は、あいさつに訪れた森山栄治・元高浜町助役と応接室で向き合い、原発の状況や地域の情勢について意見を交わしていた。
帰り際、森山氏は「お祝いです」と紙袋を差し出した。そのまま受け取った岩根氏に、同席していた原子力担当の豊松秀己副社長(当時)は言った。「高額なものかもしれません」。秘書に中身を確認させると、菓子折りに加え、1枚15万円相当の金貨が10枚あった。
「返せるタイミングで返しておきますから」。社内のコンプライアンス(法令や社会規範の順守)のトップも務める岩根氏だが、豊松氏の言に従い、金庫にしまわせた。
その豊松氏も、森山氏から現金や金貨、スーツ仕立券など1億円超を受け取っていた。手土産、昇進祝いなどとして、役員ら20人が受け取った額は計約3・2億円。常識の範囲を超える高額な金品を、役員らはどうして受け取ったのか。ある幹部は「(返すに返せず)みんな悩んでいた」と話す。
高浜原発3、4号機の誘致に尽力した森山氏は、助役を辞めた後も町の有力者として君臨していた。役員らに会うたびに金品を渡したのは「関電の幹部は自分が押さえている、という地元へのアピールだったのだろう」(同社幹部)。気性も激しく、返そうとすると「俺の顔をつぶすのか」と激怒した。一つ返せば、次に同じものを二つ持ってくる。「地獄だった」と話す幹部もいる。
そこまで追い詰められても、役…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル