ランニング愛好家の皆さん、銭湯で着替えて走りに行きませんか――。街の銭湯が市民ランナーに利用を呼びかける、その名も「ランナーズ銭湯」。着替えや汗を流す場所が欲しいランナーと、廃業相次ぐ中で利用者を増やしたい銭湯。互いの利益がぴたりと合い、全国に広がっている。(松尾由紀)
銭湯初心者のランナーも歓迎
3月初めの午後6時過ぎ、大阪市阿倍野区の銭湯「いりふね温泉」に勤め帰りのランナーが続々とやって来た。近くの長居公園で毎週7時過ぎからあるランニング会に参加する人たちだ。
大人450円の入浴料を払って脱衣場へ。ランニングウェアに着替えると、フロントに戻り、ロッカーの鍵を預けて走りに行く。ランニング後は大きな湯船で疲れを癒やす。
大阪府豊中市の会社員男性(43)は数年前からの常連。「シャワーと違って大浴場で温まるし、くつろげます」。ランニングを始めて1年になる大阪市の会社員女性(34)は「同じようにここから走る仲間が増えた。入浴後のビールは最高の味」と話した。
自身もランニングが趣味の店主、前川優さん(66)が、銭湯の利用を呼びかけ始めたのは10年以上前。口コミで人気となり、秋から冬のマラソンシーズンになると多い日には30人ほどが利用する。
利用料は入浴料のみ。ただ、ロッカーを長時間使うため、ランナーは上段か下段を利用し、使いやすい中段は入浴客のために空けるルールだ。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛の影響で、3月下旬からランナーだけでなく一般客も減り、時短営業や臨時休業を強いられる銭湯もあった。いりふね温泉では、玄関と脱衣場にアルコール消毒液を置き、クーラー稼働中でも窓を開けて換気に注意し、5月22日から1カ月半ぶりに通常営業に戻した。前川さんは「ランニングが縁で初めて銭湯に来た人や、普段から通うようになった人もいる。大変な状況だが、ぜひまた来て欲しい」と心待ちにする。
加盟する大阪府公衆浴場組合では2015年から「ランナーズ銭湯」を打ち出す。加盟346軒(5月1日現在)のうち約60軒が参加、組合ホームページでロッカー数やランニングコースなどを紹介している。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル