朝起きられなくなったり、立ちくらみがしたりする起立性調節障害(OD)。思春期に発症しやすく、学校に行けなくなる子どもたちも少なくない。ここ10年で病名は知られるようになったが、学校現場の対応はなかなか進まない。当事者たちの声から、どんなサポートがあればいいのか考える。 【グラフィック】起立性調節障害とは
■「何でって、戸惑われるのが怖い」
クラスメートはみんな、病気の名前は知っている。1週間ぶりに学校に行くと、先生や友達が心配してくれる。「大丈夫かな」「しんどくないの?」―。広島市に住む中学2年の女子生徒(14)は、周りの気遣いに感謝する半面、腫れ物に触るような対応に胸が痛む。「私にどう接すればいいか、みんなきっと分からないんです」 朝、頭全体が締め付けられるような痛みがして起きられない。ふらついて制服のボタンが留められない。そんな体の不調に加え、この病気にはもう一つのつらさがある。外見からはどこが悪いのか分からない。だから、SOSを出しにくい。「えっ何でって、戸惑われるのが怖いんです」 本当は助けが欲しい。休んだ日のノートをコピーさせてもらえる友だちを持ちたい。テストの日程や時間を考慮してほしい。授業や課題提出がオンラインでできたらいい。何より「浦島太郎」にならないようにクラスの情報を知っておきたい…。いろんな思いを結局こらえ、言ってしまう。「全然大丈夫だよ」
■小学生の5%、中学生の10%が発症
ODは珍しい病気ではない。日本小児心身医学会によると、軽症も含めると小学生の約5%、中学生の約10%が発症する。学会は病気への理解を広めようと、2005年に診断と治療のガイドラインを作成。本やテレビ、新聞で取り上げられる機会が増え、病名は少しずつ知られるようになった。 治療の第一人者で約1万人の患者を診てきたOD低血圧クリニック田中(大阪市)の田中英高院長によると、この10年で当事者の遅刻や保健室登校を認める学校はずいぶん増えた。「怠け」と誤解されることも減る傾向にはある。だが、病気と知っていても、その子にどんな配慮が必要かまで落とし込んで対応をしている学校は少ない。 田中院長は「患者の担任になって初めて症状を知り、個人で手探りの対応している教員がまだ多いのではないでしょうか」と指摘する。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース