国方萌乃
踏切内で転倒し、動けなくなっていた女性を近くにいた教師らが力を合わせて助けた。遮断機が下りた後だったが、助けた一人は「怖いと思う余裕もないほど必死だった」と振り返る。
7月6日昼、和歌山県立和歌山北高校教諭の貴志結衣さん(34)と松下彰吾さん(36)は、同僚が運転する車で昼食を買いに出かけていた。
和歌山市市小路の南海紀ノ川駅近くの踏切(幅約30メートル)にさしかかった時、助手席の貴志さんが異変に気づいた。自転車に乗っていた高齢の女性が踏切内で転んだ。地面に倒れ、起き上がる様子がない。「カンカンカン」と警報音が鳴り、遮断機が下り始める。転倒に気づいた別の女性が遮断機をくぐって駆け寄って助けようとするが、女性1人の力ではどうにもならないようだった。
「助けなきゃ」。後部座席にいた松下さんが車を降り、踏切の緊急停止ボタンを押すと、遮断機をくぐって高齢女性の元へ走った。額から血を流し、ぐったりしている。松下さんは高齢女性の両脇に手を入れ、女性と力を合わせて踏切の外に引きずり出した。踏切のそばで様子を見守っていた貴志さんが遮断機を持ち上げ、松下さんらを迎え入れた。
踏切を出た後、松下さんがすぐに119番通報。「痛い」と訴える高齢女性に貴志さんが「大丈夫」とやさしく声をかけた。
和歌山北署は8月12日、「大きな事故につながるところを身をていして助けてくれた」と、2人に感謝状を贈った。署によると、救助された女性は近くに住む70代。どうして転倒したかはよくわからないという。「こけた後、カンカン鳴り始めてとにかくびっくりした。助けてくれた方々に本当に感謝しています。体調の問題で感謝状贈呈の場には行けなかったが、直接お礼を言いたかった」と話しているという。
貴志さんは「当たり前のことをしただけ。生徒にも、困っている人がいたら手を差し伸べてほしいと伝えたい」、松下さんは「体感で1分ほどだった。電車が来ていたらと今思い返すと怖いが、当時は必死だった」と話した。
署は今後、最初に高齢女性に駆け寄った大石愛菜さん(33)にも感謝状を贈る予定だ。(国方萌乃)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル