岡純太郎
バンタイプの車で寝泊まりしながら仕事や旅を楽しむ「バンライフ」向けの拠点施設が石川県穴水町にある。新型コロナウイルス禍でテレワークや旅先で仕事をするワーケーションへの需要が高まるなか、新たなライフスタイルの普及を後押しする施設として注目を集めている。
金沢市から車で約1時間半。七尾湾そばを走る国道249号から少し脇にそれると、バンライフを楽しむ人々「バンライファー」向けの施設「田舎バックパッカーハウス」がある。2019年12月にオープンした。
建物は、木造2階建ての古民家を改装。リビングやキッチン、シャワー室など生活に必要な設備をひととおり備え、WiFiなども完備している。利用者は、自身の車で基本寝泊まりしながら、これらの設備を利用する。バンライファーにとっては、車中泊の際に地元の人から不審に思われる問題や、自身の安全のリスクが常につきまとうが、こうした拠点があれば、安心して車中泊ができ、長期滞在も可能だ。利用者同士の交流も深まるという。
満員電車に揺られ会社勤めに疑問抱き
運営するのはキャンピングカーや車中泊スポットのシェア事業を営む「Carstay」(横浜市)広報担当の中川生馬(いくま)さん(42)だ。地元出身者でも「あそこは田舎ですね」と語るほど、豊かな自然や海・山の幸に魅せられ、13年に神奈川県鎌倉市から穴水町に移住した。
中川さん自身もバンライフを楽しむ一人。首都圏で満員電車に揺られて会社勤めをする生活に疑問を抱き、10年に退職。妻の結花子さん(40)と日本全国をバックパッカーとして旅するようになった。11年、熊本県天草市でテント泊していた時、バンライファーと出会い、その魅力にとりつかれた。トヨタのハイエースを購入し、約100万円をかけ改装。屋根のソーラーパネルで発電し、大人2人が寝られる就寝スペースを設け、各地を巡るという。
中川さんは「最初は極端な生き方と感じるかもしれないが、やってみると想像以上に快適。都会の人混みから離れ田舎で生活すれば、自分を見つめられる時間や空間がたくさんあることに気づく。そこにはこれまでと少し違った豊かな生活がある」と魅力を語る。
「Carstay」によると、全国には300を超える車中泊スポットがあり、うち十数件で中長期の滞在が出来るという。中川さんの施設もこれまでに、3週間~3カ月滞在する利用者が出ているといい「色んな町や人に出会えるバンライフは、大切なライフスタイルの一つになる」。
宿泊料は15日プラン1万5千円、1カ月プランで2万3千円。3日間のお試しプランもある。予約は(https://inaka-backpacker.com/blog/2019/12/ib-house-application/)から。(岡純太郎)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル