長崎市沖に浮かぶ端島(通称・軍艦島)の見学施設が昨秋の台風で破損し、4カ月以上も上陸できない事態が続いている。上陸禁止は2009年4月にツアーが始まって以来12回目で、禁止期間は「最長記録」を更新中。地域経済への打撃を抑えるため、市は柵などの見学施設の設置方法を改める。2月下旬の上陸再開を目指している。
「上陸禁止が相次ぎ、ツアーへの信頼を失っている」「お客さまが納得できる説明ができない」。軍艦島周遊・上陸ツアー企画会社の軍艦島コンシェルジュ(長崎市)が昨年9月に大手旅行会社など20社にツアーへの意見を募ったところ、多くの厳しい指摘が寄せられた。回答した12社の大半が困惑を示し、中には「ツアーの中止を考えざるを得ない」との意見もあった。
岩礁を基盤にコンクリートで周囲を固めた島は高潮の被害を受けやすく、石炭の採掘で島に人が暮らしていた時代から補強と補修を繰り返してきた。15年の世界文化遺産の登録に当たっては「現状を維持する」との条件が添えられ、建ち並ぶ高層アパートは崩落を防ぐため、内部から鉄骨で支える措置を検討するなど対策に苦慮している。
上陸解禁に合わせて島の南側の見学コース沿いに設置した連結式の柵は、吹き付ける高潮のすさまじさを考慮して当初から倒れやすく設計。台風のたびに施設が破損する背景にはそうした「事情」がある。
だが度重なる上陸禁止による経済損失を抑えるため、市は今回の復旧工事から整備方針を変更。「倒れる」を前提とするのではなく、台風などの接近が予想できた段階で、あらかじめ柵を「撤去する」に改めた。迅速な作業を可能にするため、柵の柱とコンクリート地盤をつなぐボルトも従来の2本から1本に減らす。
市の試算によると、軍艦島上陸者1人当たりの観光消費額は約2万3千円。これまでの年間最高上陸者数は17年度の29万1665人で、上陸禁止となった昨年9月23日から今月14日までの日数を単純計算すると、損失額は26億円を下らないとの見方もできる。田上富久市長は「今後もさまざまな被害が出ることを想定し、早く復旧できる手法を専門家の意見も聞きながら研究していく」としている。(徳増瑛子)
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