能登半島地震で事業所の大半が被災した「輪島塗」。その職人を支援しようと、軸に漆塗りを施した万年筆を作っている「中屋万年筆」(東京都台東区)が、作業場を準備して職人に提供。「伝統の火を絶やさないように」と作業を始めている。
2月28日、東京都台東区のビルの一室に、果物のような漆の香りが広がった。筆を執るのは、輪島塗職人の川口悠(ゆう)さん(46)。4坪ほどの広さの作業場で、万年筆の表面に丁寧に漆を塗り上げていく。「どんな形でも、続けることが自分にできること。輪島への恩返しだと思っている」
輪島から300キロ離れた東京へ。1人の職人が移住した背景には、2人の社長の好連携があった。
川口さんは35歳まで、愛知や東京で産業機械メーカーのエンジニアをしていた。管理職になるのを前に「現場で物作りを続けたい」と、以前から興味のあった漆塗りを学ぶため、輪島市に移住。9年前、1924年創業の老舗「輪島漆器大雅堂(たいが)」に就職した。
積み重ねた技術と経験がものをいう職人の世界で「塗り」や表面を磨く「呂色(ろいろ)」を担い、周囲からも認められるようになった。その矢先、能登半島を大地震が襲った。
「漆を続けたい」
大雅堂は事務所や展示場が倒…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル