全国の農作物盗難被害のうち、犯人が見つかり解決済みと判明しているケースは、わずかに1割しかないことが農水省の調べで分かった。全国の市町村やJAに聞き取った。農作物盗難の調査は初めて。パトロールなどの効果を実感する声も多い。同省は産地ぐるみでの対処を呼び掛ける。
同省は2018年度、警察庁の協力を受け、被害件数の多い23道府県の市町村やJAなど218団体に聞き取り調査。盗難被害があると答えた組織は70、防止対策を講じている組織は41だった。
被害事例のうち、不審者を取り押さえるなどして「解決済み」なのは、わずか11%。「未解決」が40%、「不明」が49%を占めた。盗難に遭うと、犯人を特定して賠償請求することも難しいという実態が、改めて浮かび上がった。
被害の実態を把握することが難しいこともあり、被害報告事例1件当たりの被害額は「不明」が最も多く、60%を占めた。割合としては少ないが、「100万円以上」の被害も2%あった。
産地挙げて防犯策を
被害場所は「圃場(ほじょう)」が最も多く、48%とほぼ半分を占めた。盗難品目は桃が10件と最多。ブドウ、キャベツ、ハクサイが9件、リンゴが8件。圃場などから直接持ち出せる品目ほど、被害が多かった。
実際に講じている盗難防止対策は「パトロール」が最も多く33%。市町村やJA、警察など複数組織が連携した防犯対策が23%、ちらし配布などの啓発活動が15%と続いた。
一連の対策が盗難防止に「効果はある」との回答は39%。「盗難が減った」は7%だった。
同省は「産地を挙げて対策していることが伝われば、盗難を考える者も手を出しづらくなる」(園芸作物課)と話す。パトロールなどの活動に加えて、「立ち入り禁止」の看板や防犯カメラの設置などの対策を呼び掛けている。
日本農業新聞
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