自民党の二階俊博幹事長が7日、北海道入りする。参院選で勝敗の鍵を握る農業票を固めるためだ。二階氏は昨年11月から農業地帯の東北を回り、安倍晋三首相が断行した農協改革や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)によって悪化した農業団体との関係修復に動いてきた。だが、トランプ米大統領が先月、日米貿易交渉の「8月決着」に言及。首相が農業分野で譲歩したとの見方が広がっており、二階氏は参院選で必勝を期すため、政権に対する不安を払拭する考えだ。
二階氏は道内で地域高規格道路などを視察し、帯広市で農業関係者らとの意見交換に臨む。全国農政連の組織内候補である山田俊男参院議員(自民)も一部の日程で同行する。
農業票はかつて自民党の強固な支持基盤の一つだった。だが自民党が平成21年に下野したのを機に徐々に農業票が離れ、9年前の参院選では農政連も自民党から組織内候補の擁立を見送った。24年の政権奪還後は自民党支持に回帰したものの、TPPへの不満はくすぶり、28年の前回参院選では東北の各県で自民候補の支持を見送り自主投票とするなどした。その結果、自民党は東北を中心に改選1人区で11選挙区で敗れた。
この二の舞いを避けるため、二階氏は昨年秋から参院選を見据え、全国農業協同組合中央会(JA全中)との関係修復に取り組んできた。昨年11月には宮城県を訪れ、東北のJA全中関係者らと意見交換。二階氏の地元のJA和歌山中央会の会長も務める中家徹JA全中会長と首相の会食も仲介した。4月のJA全中主催の会合にはビデオメッセージを送り、「政治に重要なことは信頼と実行だ。自民党はJAグループとともに行動する」と寄り添う姿勢を見せた。二階氏の行動が功を奏したのか、前回参院選では鬼門だった東北各県で、自民党候補への農政連の推薦がそろいつつある。
だが、トランプ氏が先月27日の日米首脳会談で日米貿易交渉の「8月決着」に言及したことに対し、一部野党が「米国が参院選後に日米貿易交渉の妥結先送りを認める代わりに、農業分野で日本が譲歩した密約があったのではないか」と批判し、勢いづいている。首相は5日の参院本会議で密約を否定したが、「農業関係者の不安は根強い」(自民党関係者)という。
二階氏の周辺は「トランプ氏の発言の影響を払拭し、農業票をしっかりと固めたい」と語っている。(大島悠亮)
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