大阪市の淀川河口に体長8メートルほどのクジラが入り込んでから、10日夕で30時間余り。ネット上では「淀ちゃん」の名前で呼び、安否を気遣う声が募る。えさが少ないはずの浅瀬にとどまって、大丈夫なのだろうか? 専門家に聞いた。
大阪湾の生態系に精通する市立自然史博物館の外来研究員・鍋島靖信さん(69)。今回見つかったクジラについて、鼻や背びれの位置、皮膚の特徴から「マッコウクジラではないか」と言う。
海流に流されてきた?
マッコウクジラは北極から南極まで広域に生息し、成長するとオスの場合、体長16メートルほどになる。200メートル以上の深さまで潜り、ダイオウイカを主食とする。
大阪湾のイカは小さく、魚は動きが速いため、鍋島さんは「えさを追いかけて迷い込んだとは考えにくい」と話す。「何らかの理由で弱って泳ぐ力が落ち、海流に流されてきた」というのが見立てだ。
鍋島さんによると、1970年ごろから四十数年の間に、大阪湾で生きたクジラが見つかったのは数頭。ふだんは外洋にいるクジラが湾内に入り込むことは珍しいという。
14年前、和歌山では自力で
2009年5月には、和歌山県田辺市の内ノ浦湾に体長約16メートルのマッコウクジラが入り込み、20日後に自力で泳いで太平洋に姿を消したこともあった。
「外海は波が高いことから体力を消耗する」と鍋島さん。今回のクジラが同じような場所にとどまっている理由について、「波の低い浅瀬で体を休めているのでは」と推測する。
えさがなくても、クジラは体に蓄えた脂肪を使って約1カ月は生き延びることができるという。
鍋島さんは「1週間くらい見ないと、呼吸の様子などの変化がわからない。回復すれば自力で出て行く可能性もある。人為的に湾から追い出さず、いまは様子を見るべきだ」と話した。(高井里佳子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル