逃げながら見た炎「もうだめかも」 朝市の先輩たどり、歩く焼け跡

 地震から4日目の朝。降り続いた雨はやんだが、石川県輪島市河井町の「輪島朝市」の焼け跡では、まだ白い煙が上がっていた。

 三辻敬さん(56)は、焼失した朝市を歩く途中、がれきの前で足を止めた。地域の青年会議所の先輩だった60代の畠中雅樹さんが営んでいた金物店の前だった。「世話になった。ありがとう」。店の跡地に合掌した。

 近くで包装業を営む三辻さんは、朝市に仕事仲間がたくさんいた。金物店を営む畠中さんはその一人。温厚な優しい人で、人に怒る姿は見たことがなかった。

 地震直後の1日午後5時ころ、三辻さんは朝市から600メートルほどの場所にある自宅にいた。津波から避難する途中、朝市の方角をみると、空に向かって勢いよくあがる白煙と炎が見えた。「もうだめかも」。逃げながら仕事仲間を心配した。

 翌日、畠中さんと80代の畠中さんの母が亡くなったと知った。

 三辻さんにとって朝市は、先代の父が店を営む頃から親しむ、愛着のある場所だ。

 焼け野原になった朝市を歩いては、仕事仲間の店の跡地前で足を止める。地震前の活気ある姿が目に浮かぶ。

 「できれば早く復興したいという気持ちはある。でも、こんな姿を見たら……」。焼け焦げた街並みを見渡して涙を流した。(田辺拓也)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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