香港での大規模デモの引き金になった「逃亡犯条例」改正案が、正式に撤回されることになった。香港の混迷が深まる中、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が2019年9月4日に発表した。
改正案を「断固支持」するとしていた北京の中国政府からすると面子をつぶされた形だ。これを中国メディアはどう伝えたか。
■残りの「4つの要求」めぐり平行線続く
デモ隊は(1)改正案の完全撤回(2)市民活動を「暴動」とする見解の撤回(3)デモ参加者の逮捕、起訴の中止(4)警察の暴力的制圧の責任追及と外部調査実施(5)林鄭氏の辞任と民主的選挙の実現、の「5つの要求」を掲げており、現時点ではそのうち(1)のみが実現されることになった。デモ隊は残りの(2)~(5)も引き続き要求するが、特に(5)の「民主的選挙」は中国政府にとってきわめてハードルが高く、主張は平行線をたどっている。
デモ隊の「5つの要求」に注目が集まる一方で、林鄭氏は法案撤回を表明したビデオ演説の中で、「4つの提案」をしている。(1)正式に法案を撤回すること(2)独立警察苦情審議会(IPCC)の活動を全面的に支持すること(3)今月から行政長官と行政長が地域に出向き、住民と直接対話して解決法を模索すること(4)地域のリーダー、専門家、研究者ら招き、独立した形で社会の深層問題を検証して政府に解決策を提言すること、の4つだ。
新華社が引用した長官発言は…
国営メディアは、「5つの要求」ではなく、「4つの提案」を強調して報じた。例えば国営新華社通信は、「4つの提案」の内容を紹介した上で、林鄭氏の演説のうち、次の内容を紹介。デモ隊に対して引き続き厳しく臨む姿勢を反映したとみられる。
「継続的な暴力行為が香港の方の支配の基盤を揺るがし、ごく一部の人々が『1国2制度』に挑戦し、国旗や国章を汚し、香港を危険な状況に追いやっている。市民が政府や社会状況に抱いている不満の大きさに関わらず、暴力は絶対に問題解決の方法ではない。現在、最も切迫しているのは暴力を止めて法の支配を守り、社会秩序を守ることだ。政府はすべての違法行為や暴力行為に対して、厳正に法を執行する」
中国共産党系の環球時報は、胡錫進編集長がツイッターにあたる微博(ウェイボー、Weibo)で「4つの提案」について「個人的にはこれが良いと思う」と書き込み、「大陸の社会が最も願っているのは、香港がよくなることだ」として、提案を受け入れるように訴えた。書き込みの内容は環球時報のウェブサイトにも記事として掲載された。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)
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