鉛製の文字がひとつずつ、壁にずらりと敷き詰められている。タテもヨコも数ミリしかないこの文字は、活版印刷で使う活字たちだ。
その数は、ひとつの棚にざっと数万個。その棚が右にも左にも奥にも何枚も連なっているのだから、途方もない数だ。
「夜……、あれ、夜って部首なんやったっかいな」
木枠に振られた漢字を指で左から右へと追いながら、眼鏡をかけた山田善之さん(82)がその一文字を探していく。
「夜、夜、夜、夜……あれ、ないなぁ」
お目当ての活字が見つからないのがまるで楽しいことかのように、にこにこと笑いながら、辞書を開いて部首を確認し始める。あちこちから集めた活字だから、きれいに並んでいるわけではないという。
「銀河鉄道の夜」という6文字を集めるだけで、あっという間に10分が経過した。こうして活字を集めて並べ、印刷するための「版」を作り、インクをつけて紙に刷っていく。
竹やぶかき分け探した活字、夫婦2人で再出発
こぢんまりとした弁当屋や仏…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル