妹(当時6)を暴行して死なせたとして、兄で無職の少年(17)が傷害致死の非行内容で大津家裁に送致された事件をめぐり、県の児童虐待事例検証部会(部会長=野田正人・立命館大大学院特任教授)が8月30日、大津市内で開かれた。事件までの経緯を確認し、県内外の児童相談所の連携について話し合った。今後、会議を複数回重ね、再発防止策をまとめる。
兄妹を見守っていた大津・高島子ども家庭相談センター(県の児童相談所)によると、兄は京都府、妹は大阪市の児童養護施設で暮らしていたが、妹が小学1年生になった今年4月ごろから母親と大津市で暮らし始めた。
妹は8月1日、市内の児童公園のジャングルジムの下で倒れているところを救急搬送され、病院で死亡が確認された。一緒にいた少年は「ジャングルジムから落ちた」と近所の人に119番通報を頼んだが、県警は死因を暴行と判断し、4日に少年を逮捕した。
捜査関係者や近所の住民らによると、母親は留守がちで、少年は「妹の世話がつらかった」との趣旨の説明をしているという。少年は25日に家裁に送致され、2週間の観護措置となった。今後、検察官送致(逆送)や少年院送致などの処分を決める。
検証部会は弁護士や医師、元児童相談所長ら7人の委員で構成。まず、亡くなった女児に黙とうをささげた。
県子ども・青少年局の奥田康博局長は「家庭相談センターなどの支援機関が関わりながら事件を防げなかったことを重く受け止めている。検証結果を今後の適切な支援につなげたい」とあいさつ。その後、会議は非公開になった。
終了後、野田特任教授が記者会見を開き、内容を説明。大津・高島子ども家庭相談センターや県の担当者から経緯を聞き、今後の調査について、委員が意見を出し合ったという。
野田特任教授は「兄も妹も、行政が手の内に入れていたが、家庭に帰し、最悪の結果になった。家庭の要因だけではなく、行政としてどうあるべきだったか、しっかり考えることが重要だ」と強調した。
委員からは京都や大阪の児相を念頭に、「児童相談所の間でどのような引き継ぎがあったのか」などの質問が出たという。今後、兄妹にかかわった県外の児相などに調査への協力を求めることも検討する。
野田特任教授は「十分に養育されていない子どもが加害者になってしまった。子育て行政の面でみれば、2人とも、ある意味で被害者という側面も見落とせない」と話した。(鈴木洋和)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル