絶滅が危惧されている高級食材・うなぎだが、3年後には安く手に入る時代が来るかもしれない。日本の食文化を代表するニホンウナギ。稚魚のシラスウナギの国内漁獲量は、乱獲などにより減少、輸入に頼っているのが現状だ。今年は、シラスウナギ漁は好調だった一方、去年は過去最低を記録していて、漁獲量は安定しない。うなぎの稚魚の詳しい生態はわかっておらず、不漁の原因も不明だ。 【動画】うなぎが安くなる?稚魚の生産に光 絶滅危惧種にも指定されているニホンウナギ。資源保護が課題となっている中、「天然海水によるシラスウナギの人工生産に成功した」と、新日本科学が発表した。さらに、量産化の技術確立に向けて、準備が整ったとして3年後の2023年までに1万匹の生産を目指すとしている。
現在、沖永良部島の事業所でふ化した幼生が稚魚になるまでの生存率は1%未満。2023年までに5%まで向上させることを目標に、餌の開発などを進めていく。新日本科学の永田良一社長は、今後の展望について「事業化に向けた研究へステップアップできる。将来は規模を拡大し、島の雇用創出に役立てたら」と述べた。 この知らせに、うなぎ店では期待の声があがっている。「うなぎ あら川」の松井信一社長は「うまくいってもらえれば、もっとうなぎも安くみなさんに提供できる」と、現状では1尾あたり1000円以上する価格の低下を待ち望んでおり、日常的に食べる魚になるのが理想だ。
WIRED日本版の松島倫明編集長は、養殖技術が進むことに「素晴らしい。おいしいうなぎが食べられるようになるのは、すごくうれしいニュース」としたものの、一方でそもそもニホンウナギが絶滅危惧種になった経緯に触れ「日本でも1980年代以降、乱獲して大量消費したことで起きているのも確か。養殖の新しい技術で僕らの食卓に乗るのはうれしいことだが、僕らはこれだけの量を食べたいと思っていたのか、スーパーであれだけうなぎが並ぶことは自分たちが望んでいる姿なのか、今までのように大量消費・大量廃棄していく社会を続けるために、この技術を使うのか。消費者の側も考えないといけない」と指摘した。 世界の人口が70億人から、いずれ100億人まで増えていくと見込まれている中で、食を維持するシステムの構築は急務だ。ニホンウナギ同様に、乱獲をしていけば絶滅の危機に瀕するのは明白。乱獲をせず生態系を守りながら漁業する、養殖するということも考えなくてはいけない。肉においても、大豆を使った人工肉や、培養肉なども作られている。また、気候変動のために現在の品種が育たない植物において、ゲノム編集をしたものを食べるのか、それは許されるのかも議論になっている。「タンパク質が不足する中で、昆虫食を必ず受け入れないといけないのか。地球を維持するために、どういった食卓イノベーションがあるのか。ある種のテクノロジーによる食と、地球環境の維持を僕らがどう両立するのか。その一つが今回のうなぎの件だと思う」と、人類が地球とどう生きていくかの問題だと語っていた。
(ABEMA/「ABEMAヒルズ」より)
Source : 国内 – Yahoo!ニュース