高橋俊成 山本知弘
生活保護受給者の自動車保有・利用のより柔軟な判断を行政に促す判決だ――車の運転記録提出を拒んだことで生活保護を停止されたのは不当とし、三重県鈴鹿市の親子が処分取り消しを同市に求めた訴訟。21日の津地裁判決は、停止処分を違法と断じ、市に損害賠償も命じた。原告側は判決を喜びをもって受け止めた。
「市には怒りしかなかったが、今日の判決で安心できた」。原告の女性(81)は閉廷後、こう振り返った。原告に名を連ねた次男は入院中。「早く判決を報告したいが、見舞いへ行くにも田舎ではタクシーもつかまらない」と、車所有の必要性を改めてにじませた。
現行の生活保護制度では車の保有・利用に対し、通院や通勤にあたって公共交通機関の利用が著しく困難な場合など、厳格な要件を課す。市は難病を抱える次男の通院に要件を限り、運転記録の提出を求めた。
しかし、市が運転キロ数や経路などの正確な記載まで求めた点を、判決は「過剰だとの疑いがある」と批判。生活保護の停止によって、女性らが健康で文化的な最低限度の生活を維持するのが困難となることを市側は容易に想定できたのに、車を買い物にも利用するという軽微な違反をも硬直的に悪質だと判断する市独自の運用で、漫然と停止処分を出したと結論づけた。
原告側代理人の芦葉甫弁護士は「生活保護受給者が車を保有する際の理由の検討や、保有を認めた受給者にどんな情報提出を求めるのか、枠組みを考える上で先行事例になる」と評価。行政に「受給者の実情に合わせ、より柔軟に車の保有・利用を認めるべきだ」と注文をつけた。
鈴鹿市の末松則子市長は「本市の主張が認められず残念。判決の内容を精査して対応する」とのコメントを発表した。(高橋俊成、山本知弘)
生活保護と自動車記録をめぐる訴訟の争点
<運転の記録を求めることは妥…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル