日本で唯一、陸地を一切走らない。走るのは、極寒の凍った海の上――。そんなクレージーなマラソン大会が、オホーツク海に面する北海道・別海町であった。過酷なレースを制したのはどんな「猛者」なのか。
今年で2回目となる「別海アイスマラソン」の舞台は野付湾。水深の浅い内海で、厳冬期になると全面が凍る。
42kmの部は新聞配達するプロアスリート
42キロの部を制したのは、山梨県から参加したエース栗原さん。3時間48分21秒で、前年の優勝タイム(5時間34分15秒)を大幅に上回った。
「見渡す限り雪、氷。いろんなレースがありますけど、ここでしかできない体験ができました。タイム的にはすごいのかすごくないのかわからないですけど、ベストを尽くしました」
ふだん、新聞配達をしている。午前3時半に起き、山梨県北杜市の標高1200メートルエリアまで車で移動。集落内を走りながら配達をしているという。
「それが練習であり、お給料もいただける。すばらしい仕事だと思っています。いろんな新聞を配りながら鍛えています」
仕事柄、寒さ対策はできていた。先日の関東甲信での積雪の際には雪上でも練習した。ただ、大自然のレースには過酷さもあった。
当日の氷の厚さは約50センチで、その上に雪が積もっていた。好天だった一方、日が昇るにつれ雪がゆるみ、足元は砂浜のような状態に。さすがに「軟らかくなった雪対策」までは万全ではなかった。
「足をとられるところもありました。脚力に加え、体のバランスをとりながら走るのはかなり大変でした」
栗原さんは、「地域密着型プロアスリート」でもある。地元企業のスポンサーを獲得しながら、トライアスロンやデュアスロンなどに励み、SNSで競技や地域の情報を発信している。
16キロの部はホタテ漁師
16キロの部の優勝者は、上林亨さん。別海町・尾岱沼のホタテ漁師で、連覇を果たした。タイムは1時間28分51秒で、前年より約10分速かった。
「昨年に比べると雪がしまっていて、すごく走りやすかったです」
続けて、人口減少が進む別海町への思いを語った。
「別海町は冬の観光が弱く、目玉になるようなイベントがあまりないという状況でした。地元の特性を生かしたアイスマラソンが始まり、人が集まってくれてうれしく思います」
「この大会は景観がすばらしく、非日常を感じられます。走る以外でも地元の魚介などを楽しめます。ぜひ野付湾にきてください」
大会は42キロ、16キロ、4・2キロの3部門があり、海外からを含む約80人が参加した。(原知恵子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment