遠回りで見つけた研究テーマ 海洋生物学者が海底に魅了されたわけ

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聞き手・阿部朋美

 国立研究開発法人の海洋研究開発機構(JAMSTEC)で深海の生物の研究をしている渡部裕美さん(43)は、大学選びについて考え始めたのも、本当に研究したいテーマが見つかったのも遅かったそうです。進路をどのようにして決めたのか聞きました。

「しんかい6500」で調査も

 深海底にすむ生物は生まれてから死ぬまでの間に何千キロも移動するものがいると考えられています。6500メートルまで潜れる有人潜水調査船「しんかい6500」に乗って調査をしたり、採取した生物を飼育したりしています。

 深海の生物たちがどこから来て、どこへ行くのか、どうやって新しい種が生まれるのかを飼育実験やDNAの解析などで調べています。

 深海という環境は、人が簡単に見ることができないものです。光や電波が届かないため、研究が難しいのが現状です。生命は海で誕生して進化してきましたが、海の9割以上を占める深海の生物についてわかっていることは、まだごくわずかです。深海生物の研究を通じて、地球の生態系の中でどういうことが起こっているかというのを理解することができたらいいなと思っています。

「大学院」という言葉を初めて知ったのは

 幼い頃から生物に強い興味があったわけではなく、どのような職業に就きたいかという明確なビジョンも持っていませんでした。高校を選ぶ時には、オーケストラの活動や独特な文化祭に憧れて東京都日比谷高校に進学しました。部活動に熱心に取り組んでいて、大学選びについて考え始めたのは周りと比べて遅かったと思います。

 地球のことを総合的に学びたいと思って、千葉大学の地球科学科に進んでからも、研究者になりたいと考えたことはありませんでした。漠然と博物館の学芸員に興味があり、そのためには大学院に進学して学位を取った方がいいと聞きました。その時に初めて「大学院」という言葉を知りました。

 転機は大学院の修士課程の時です。古生物の研究室に所属していましたが、このまま研究を続けて良いのか不安に思っている頃でした。

「6年遅れ」と言われて……

 深海調査に参加する機会に恵…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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