作家遠藤周作(1923~96)の未発表小説が、長崎市遠藤周作文学館で確認された。市が26日、発表した。「影に対して」と題された、自伝的な性格を持つ中編。遠藤の没後、未発表の日記や書簡、エッセーの原稿などは見つかっているが、書き下ろし純文学小説の発見は初めてだという。
見つかったのは原稿用紙の裏につづられた自筆の草稿2枚と、秘書による清書原稿104枚。今年2月、学芸員が、遠藤家から寄託された約3万点の資料から見つけ、調べていた。
小説家になる夢をあきらめ、探偵小説の翻訳で妻子を養う男・勝呂が主人公。幼いころに離別した亡き母の知人を訪ね、足跡をたどる。バイオリンの演奏に命を捧げる母の生き方に共鳴しつつ、平凡な生活に埋没する自身への苦悩が描かれている。両親の離婚や母を孤独のうちに死なせてしまったことへの後悔など、遠藤自身の体験が多分に投影されている。
川崎友理子学芸員(27)によ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル