選択的夫婦別姓をめぐり自民党内の綱引きが顕在化している。慎重派が家族の一体感を揺るがしかねないとして旧姓の通称使用拡大などを訴えれば、推進派は多様な選択を重視すべきだと主張。1日の夫婦別姓に関する会合で溝は埋まらず、意見集約は難航が予想される。 「夫婦別姓を導入しないことが少子化の原因になっているとは心外だ」。1日の党女性活躍推進特別委員会で、別姓導入に反対する閣僚経験者はこう訴えた。委員長の森雅子前法相が11月26日、菅義偉首相に手渡した提言で結婚に伴う姓の変更について「結婚をためらう女性や男性がおり、少子化の一因となっているとの指摘もある」と明記したことを問題視したからだ。 慎重派からは党内議論が不十分だとして法務部会などでも意見交換すべきだとの意見も相次いだ。これに対し、推進派からは別姓導入を支持する世論などを踏まえ、「自分らしさを尊重するのが自民党ではないか」との意見が上がった。 選択的夫婦別姓は、夫婦が希望すれば結婚後もそれぞれ従前の姓を名乗れる制度。容認論はこれまで野党を中心に強くあったが、近年は働く女性の増加などを背景に政府・与党からも賛同する声が高まっている。 橋本聖子男女共同参画担当相は「深刻な少子高齢化を食い止めるために非常に重要で配慮すべきだ」と主張。公明党の山口那津男代表も1日の記者会見で「社会の変化を直視し、時代に合った判断をすべきだ」と自民に認めるよう促した。 ただ、子供の姓をどちらにするのかで家庭内に混乱や対立を招きかねないなどの懸念は少なくない。自民党有志による議員連盟「『絆』を紡ぐ会」を立ち上げた高市早苗前総務相ら慎重派は、旧姓の通称使用拡大を求める提言を近く党幹部や政府に申し入れる方針。同党の保守系議員でつくる「保守団結の会」も勉強会を開き、現行制度の維持を訴えている。 政府は今月中旬にも第5次男女共同参画基本計画を閣議決定する予定。「夫婦別姓」に関する文言が入るか否かが焦点で、慎重・推進両派の攻防が激化する可能性がある。(広池慶一)
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