10月でも肌を刺す日差しの下、背丈ほどのサトウキビが湿った海風に揺れていた。選挙カーが走ることもなく、候補者ポスターのほかに選挙らしい雰囲気はない。
東京から約2千キロ、約1700人が暮らす日本最西端の島・沖縄県与那国町。安慶名(あげな)勝正さん(64)の畑の一角から野菜は消え、赤い土がむき出しになっていた。
2004年、JA職員から野菜農家に転じた。粘土質のやせた土地が広がる島にはそれまで、サトウキビと畜産の農家しかいなかった。島外から船で運ばれてくる野菜はどれも値段が高く、「島の人に採れたての野菜を気軽に食べてもらいたい」と考えた。
肥料を加え、土づくりに力を入れた。ジャガイモ、大根、にんじん、トマト……。品目を少しずつ増やし、島の商店に直接納入した。
数年前から島唯一のホテルに…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル