参院選も終盤に入る中、わたしたち有権者も改めて気をつけたいのが“うっかり選挙違反”だ。公職選挙法の規制対象は候補者や陣営関係者だけではない。有権者も知らず知らずのうちに選挙違反をしてしまうことがあるかもしれない。この機会に、どんな行為が違反になるのか、知っておこう。(大竹直樹)
「手作りのおにぎりです。よろしかったらどうぞ」。立候補した知人の選挙事務所を訪れた際に、出されたおにぎりを食べていいのか。
答えはNO。公選法が禁止する供応・買収となる可能性が否定できないからだ。日本大の岩井奉信教授(政治学)は、「飲食の提供は供応に該当する。供応を受けた有権者は罪に問われないが、供応をした陣営関係者は罪に問われ、候補者本人も、直接関わっていない場合でも、連座制が適用され、当選が無効になることがある」と指摘する。
買収の場合は3年以下の懲役か禁錮、または50万円以下の罰金。食事や金銭を自分の方から要求した場合は、有権者も罪に問われる可能性もある。
公選法では、選挙事務所で出していいのは「茶菓」に限定されている。茶菓とは文字通り、お茶や菓子のこと。お茶うけの漬物や果物程度は茶菓に含まれるとみられるが、おにぎりなどのご飯ものやおかずは違反になるとみられ、酒をごちそうになるのもいけない。
選挙中だけではない。「おかげさまで当選できました。ついては、祝勝会を開きますのでご参加ください」。選挙後のこんなお誘いも要注意だ。「公選法では候補者がお礼をしてはいけないことになっている」(岩井教授)ためだ。割り勘や会費制でも、祝勝会名目の酒席は選挙違反になる可能性があるという。
供応や買収以外にも、有権者が気をつけなければいけないのが「選挙の自由妨害」だ。気に入らない候補者がいるからといって、そのポスターを破ったり、落書きしたりしてはいけない。候補者の演説を妨害する行為も違法だ。
個人のやじは該当しないとみられているが、集団で演説が聞き取れないほどの妨害行為を行った場合は、公選法が適用される可能性もある。違反すれば4年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金が科される。
平成25年の参院選から解禁されたインターネットを使った選挙運動にも注意が必要だ。有権者もツイッターやフェイスブック、LINEなどのSNS(会員制交流サイト)を使って、特定の候補者への支持を呼びかけることができるようになったが、電子メールを使った呼びかけはNG。政党と候補者以外には認められていない。「なりすましのリスクがある」(総務省選挙課)からだという。違反した場合は、禁錮2年以下または罰金50万円以下が科される可能性もある。
また、SNSでの選挙運動も認められるのは、公示日の立候補から投票日前日まで。ネット選挙の法令に詳しい深沢諭史弁護士は「投票日前日の午後11時59分59秒までなので、SNSのリツイート(転載)が投票日当日になってしまうと処罰の対象になることもある」と話す。
投票日当日に「みんなで投票に行こう!」と呼びかけるのはよいが、「私は○○候補に投票してきました!」と投稿するのは違法となる可能性があるというから、注意が必要だ。
もちろん、ネット上に悪質な誹謗(ひぼう)中傷を書き込めば、名誉毀損(きそん)や侮辱など罪に該当することもある。特定の候補を当選させない目的をもって、候補者に関する虚偽の事実、つまり「デマ」を記載するのも公選法の処罰対象となる。
深沢弁護士は「デマのニュースを、そのままSNSなどで拡散するのもNG。情報を発信するときは、信用できるニュースサイトなどから引用する必要がある」と警鐘を鳴らす。18歳未満の選挙運動は認められないから、期間中は子供のSNS、ネットの書き込みにも、保護者は注意を配ったほうがよさそうだ。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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