相続の際の遺産分割は、単純な割り算では片付かないことが少なくありません。親族間で残念ながら揉め事が起き、「相続」ならぬ「争続」となってしまうケースもみられます。遺産分割をめぐって起こりがちなトラブル、そのリスクを避けるための知識や心構えなどについて、札幌弁護士会の辰野真也弁護士に聞きました。(報道センター 三浦辰治)
数十万円の分割で揉める場合も
――遺産分割の際に起きる揉め事には、どのような例がありますか?
多くの方々は自分の死後、または親の死後、「揉め事なんて起きない」「仲良く話し合えば何とかなる」と思いがちです。ただ、実際には揉める例も多いのです。「遺産がたくさんあるわけじゃないから心配ない」という声も聞きますが、間違いです。揉めるのは何千万円という単位の遺産があるケースばかりではありません。数百万円、数十万円でも揉め事は起きます。
残念なことに、一部の親族に遺産の「使い込み」が疑われるケースもよく見られます。親が亡くなって直ちに遺産分割の協議が始まり、その時点で使い込みが見つかるケースもありますが、何らかの事情で協議が延び延びになり、ずいぶん時間が経って、いざ協議を始めたら、預金が少なくなっていたり、一人の親族に不動産の名義が変わっていたり、などが判明することも少なくありません。時間が経てば経つほど、反論するための証拠集めも難しくなります。
「寄与分」と「特別受益」の制度も
一部の親族が遺産分割を有利にするため、親が亡くなる前から囲い込んだり、ひどい場合には家から一歩も外に出さない、他の親族に一切会わせない、といったことも実際にあります。
――公平に遺産を分けるため法律で定められた仕組みはないのですか?
「寄与分」と「特別受益」という制度があります。まず「寄与分」ですが、遺産の形成や維持、増加に「特別な寄与」があった人がいたら相続の際に特別に多く遺産をあげようという制度です。親が亡くなり、その遺産400万円を兄弟3人が相続するとします。本来なら400万円を3等分するところですが、長男に100万円の「寄与分」があったと認められれば、長男はその100万円と、残り300万円を3等分した100万円を合わせて200万円を受け取ることができます。残る兄弟2人の相続額は100万円ずつとなります。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース