「あなたの兄は元気で92歳まで長生きしましたよ」
今年2月、札幌市に住む多原良子さん(72)は、沖縄県糸満市の壕(ごう)の入り口で、1945年3月に25歳で戦死した義理の叔父、多原春雄さんに呼びかけた。亡くなった春雄さんの母親や兄夫婦の写真も掲げ、語りかける。良子さんの子ども、順也さん(51)亜希子さん(46)も共に手を合わせた。
続けてカムイ(神)に感謝するアイヌの所作も行った。
「安らかにお眠り下さい。そして一日も早く北海道に帰ってこられますように」
アイヌの祖母をもつ良子さんの、慰霊の旅の一場面だ。
沖縄の壕を訪れた最初のきっかけは日章旗だった。「兄貴頑張レ」と春雄さんの寄せ書きが残る旗が届いたのは2015年。春雄さんの兄の順一さんの中国出征時のもので、戦後70年以上経ってから、米国の団体から札幌市に住む良子さん夫妻に返還された。
更に21年、春雄さんの母が…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル