阿久沢悦子
福島第一原発事故後の避難者の状況を調査するため、国連人権担当特別報告者のセシリア・ヒメネスダマリーさんが来日した。12日間にわたる調査を終え、東京都千代田区の日本記者クラブで7日に会見した。
原発避難者には、避難指示区域からの避難者(強制避難者)と、区域外からの避難者(自主避難者)がいて、それぞれ受けられる賠償額や支援に大きな格差がある。ヒメネスダマリーさんは「強制か自主かの区別は取り除いて、権利や必要性に基づいて避難者への支援を継続すべきだ」と述べた。
9月26日から政府や福島県の関係者、避難者、支援団体、研究者らと各地で面会し、日本の法制度や支援策を検討した。事故から11年後の状況について、ヒメネスダマリーさんは「避難者に(福島への)帰還を求める方向にシフトしており、帰還しない人は支援の打ち切りに直面している」とした。
特に福島県が、県外への自主避難者に対する住宅の無償提供を2017年3月末でやめたことについて、「避難者のうち労働人口の20%が失業しており、日本の失業率3%に比べ高い水準だ。障害や疾病がある人も多く、生活や就労の点で脆弱(ぜいじゃく)性を抱えているといえる。行政が何らかの住居支援を再開すべきだ」と述べた。
また、復興庁は今年6月、福島県外避難者のうち、「所在確認が取れなかった」「避難者登録がある市町村の外へ転居した」「帰還の意思がないと判断された」「すでに死亡」などの理由で計6604人を順次、避難者統計から外すと発表した。避難者から「帰還の意思の有無で判断するのはおかしい」など異論が相次いでいる。
こうした状況について、ヒメネスダマリーさんは「正確な避難者数を把握すること、政府が避難者の声をきくことは大事で、解決すべき問題と考えている」と話した。調査報告は来年6月にジュネーブで開かれる国連人権委員会で発表する。(阿久沢悦子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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