都構想、庁舎は「間借り」 経済効果1・1兆円に疑問も(産経新聞)

 大阪市を廃止して特別区に再編する大阪都構想の制度案(協定書)の基本方針が26日、最大会派の大阪維新の会と公明党の賛成多数により法定協議会で可決された。年明けからは協定書の作成作業に入り、総務省のチェックを受けて完成するが「根本的な論点で突き返されることはほぼない」(維新幹部)ため、今回可決された方向性が揺らぐことはまずない。ただ庁舎整備のあり方や歳出削減効果をめぐっては専門家の間でも評価が分かれ、なお検討すべき課題は残る。

■間借りで314億円削減

 都構想の主要論点のうち当初の想定から大きく変更されたのが、淀川、北、中央、天王寺の4特別区の庁舎整備方針だ。北区は現在の市役所本庁舎(中之島庁舎)を、中央区も既存施設を活用するが、執務スペースが不足する淀川、天王寺両区は新庁舎を別途建設するか、民間ビルを賃借する計画だった。

 だが公明が都構想に賛同するにあたり、移行コストの抑制を条件として提示。淀川、天王寺区の一部部署を中之島庁舎に配置することで新設を見送り、従来案より314億円のコスト削減を図ることが決まった。

 この「間借り案」を採用した結果、淀川区では本庁舎の職員約80人に対し約880人が、天王寺区も本庁舎の約150人を上回る約580人が、区をまたいだ中之島庁舎で勤務することになった。

 こうした組織態勢について、自民党は災害対応に支障が出ると批判。防災政策が専門の関西大の永松伸吾教授も「危機管理面ではマイナス」と指摘し、災害時は各部局の情報を集約する必要がありフェース・トゥ・フェースが最も混乱しない方法だとしている。

 これに対し維新は、危機管理部門はいずれの特別区も本庁舎に配置されると強調。「市長1人より4人の特別区長が各区で指示する方が、きめ細かな災害対応ができる」(松井一郎・大阪市長)と反論している。

■平成大合併の議論

 制度移行による歳出削減効果が「10年間で最大約1・1兆円」に上るという試算をめぐっても意見が割れた。

 試算は府市が学校法人「嘉悦学園」(東京)に委託し、昨年7月に公表された。試算は《人口規模が大きな自治体になるほどスケールメリットが働き、住民1人当たりの歳出は減るが、ある一定の規模を超えると逆に歳出が増える》という先行研究に基づく。人口を横軸、1人当たりの歳出額を縦軸としてグラフ化すると「U字型」になり、歳出が最小となるU字の底辺部分が自治体の「最適規模」になるとの理論だ。

 嘉悦学園はその最適規模について約50万人と試算。人口約270万人の大阪市を約60万~75万人の4特別区に再編すれば年間約1100億円の歳出減となり、10年間で約1・1兆円の財政効率化効果があると結論づけた。

 維新は都構想の効果を裏付ける資料として評価するが、一橋大の佐藤主光(もとひろ)教授(財政学)は「U字カーブは平成の大合併の議論で用いられた手法。自治体の分割議論に当てはめるのは乱暴だ」と批判。そのうえで「特別区移行に伴い市から府に移管される仕事があるのに、それが歳出に反映されていない」と指摘した。

■住所表記も論点

 課題を残しつつも骨格は固まり、今後はより詳細な制度設計に入るが、市民に身近な「住所表記」も論点として残る。

 昨年4月に公表された素案では、特別区の名称に続き、現在の行政区名と町名を表記する形が提案された。たとえば「大阪市住之江区南港北」は「大阪府中央区住之江南港北」といった具合だ。

 ただ、この方法だと「大阪市住之江区住之江」は「中央区住之江住之江」となり、地名の連続が生じてしまう。その場合は行政区名を除いて「中央区住之江」と整理することが検討されている。

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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